fragrance 3





「ん・・・っ」
久しぶりの口付けに2人はすぐに夢中になった。
直江は唇を合わせたまま、左手に掴んでいる高耶の腕を右手に持ち替え、ぐいと引き寄せると高耶の体の向きを変えた。空いた左手を高耶の腰に回し、自らの腰に密着させるように引き寄せる。
互いの体を密着させると、高耶は直江の身につけるエゴイストの香りと少しキツイ煙草の香りに包まれた。
(煙草・・・)
いつもはあまり吸わないから、男からこんなにキツイ煙草の香りがするのは初めてだった。
「・・・んんっ」
するりと滑り込んできた舌も、煙草の苦い味がする。
舌を絡み合わせて久しぶりのキスを味わい煙草の味が分からなくなった頃。少し唇を離し「お前、煙草臭い」と文句を言った高耶に直江は苦笑した。
「あなたが悪いんですよ。俺を放っておくから」
煙草が手放せなくなったんです、と言うと高耶の手を取り部屋の奥にあるベッドへと誘った。
「すごく淋しかった」
ベッドに腰掛け、繋いだ手はそのままに高耶を見上げて言う直江に、大人の男が言う台詞ではないなと思ったが、そうさせたのは自分だったから苦笑するだけに留めた。
「悪かった。でも・・・」
謝罪の言葉の後、続けようとした高耶に直江は「それ以上言わないで」と遮った。
「今も詰ってしまいそうなのを我慢しているんです。その話はもうしないで」
懇願するように見上げてくる直江に高耶は折れた。溜息をつき頷いた高耶の手をぐいと引き寄せると、直江は倒れこんできた高耶を抱きとめる。
「久しぶりのあなただ・・・」
「直江・・・」
耳元で囁くように告げる直江の背に腕を回すと、高耶は謝罪の意味も込めてぎゅっと抱きしめた。
高耶を抱きしめたままベッドへと横たえた直江は、高耶の両脇に手をつき体を起こすと上から高耶を見つめる。
「今はあなたを感じさせて・・・?」
そう言うと、高耶のシャツへと左手を伸ばしボタンを一つづつ外し始めたのに高耶は焦った。
「待ッ・・・」
「待たない」
胸を押し体を離そうとする高耶の左手を右手で掴むと、高耶の頭上でシーツに縫いとめる。強く握り締めている高耶の指に、直江は宥めるように指を絡めた。
左手でボタンを全て外すと、直江は体を倒し首筋に顔を寄せた。襟を寛げ滑らかな肌に舌を這わせる。
「・・・ッ」
首筋から湧き上がる痺れに似た感覚に、高耶は唇を噛んだ。
「噛まないで」
それに気づいた直江が「傷になる」と指を唇に這わす。
「じゃ・・・あ、止めろ・・・ッ」
僅かに息を上げた高耶が止めるが、直江は「嫌です」と一蹴した。服を肌蹴ながら唇を首筋から鎖骨へと移動させ、窪みを舐め上げた後強く吸い赤い跡を残す。
「・・・んッ・・・」
直江の唇が跡を残すたび上がりそうになる声を、高耶は慌てて口元を右手の甲で押さえ必死に堪える。心臓の辺りに跡をつけた直江が少し体を起こし、赤い跡を満足そうに眺めると、顔を上げて高耶の顔を覗き込む。大きな手の平がわき腹から胸へと撫でるように上がり僅かな突起を掠めた。
「んんッ!」
今までとは違う強い刺激に、それでも高耶は声を堪えた。
「声、聞かせてくれないんですか・・・?」
声を我慢しているからか、涙の浮かぶ高耶の目じりに口付けながら直江が問う。
「・・・んッ・・・み・・んなに・・・んぅッ・・・聞かれるッ・・・」
胸を這う直江の手に時々言葉を詰まらせながら、高耶は「だから、もうッ」と止める様に直江に言うが、
「・・・聞かせればいい」
そう言うと、直江は高耶の胸の突起に舌を這わせた。
「――んんんッッ!」
その刺激にも声を抑えてみせた高耶に、直江の嗜虐心に火がついた。微かに立ち上がる突起に舌を絡ませ吸い上げる。そうしておいて、反対の突起にも指を這わせると摘みあげた。
「んあッ!」
弱い部分を両方同時に責められて、ついに高耶が高い嬌声を上げた時だった。

「――高耶くん?」
ドアの向こうから照弘の声が聞こえたのに、びくりと震えた高耶は顔を真っ赤にして暴れだした。それを圧し掛かることでベッドに押さえつけた直江は、「じっとしていて」と高耶に囁くと、
「何か用ですか」
とドアの外にいる照弘へと言葉を発した。
「お前と高耶くんに話があるんだが・・・高耶くん、大丈夫かい?」
先程の嬌声を聞いたのか心配そうに聞いてくる照弘に、まだ息の整わない高耶の代わりに直江が答える。
「まるで私が苛めているような言い草ですね」
「私は高耶くんに聞いているんだ」
直江の言葉にぴしゃりと言い返した照弘に、やっと息を整えた高耶は返事を返した。
「・・・大丈夫、です」
聞こえてきた高耶の声に、照弘のホッとしたような気配が伝わってくる。
「それならいいんだが。・・・話があるんだが、父の書斎に来れるかい?」
「分かりました。・・・後で伺います」
行きたくないと表情で渋って見せた直江の代わりに、高耶が答えた。





駄犬は急に止まれないw



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