fragrance ベッド編 寝室のベッドでシーツに包まれると、直江の香りが強くなる。 ベッドの上で圧し掛かってくる直江に口付けられながら、ぼんやりと霞む頭で高耶はそう考えていた。 「キスの最中に他所事を考えるなんて、余裕ですね・・・」 キスに集中していない高耶に気づき、口づけを解いた直江が至近距離でそう囁くのを聞いて、高耶が呟く。 「オレの頭の中は、いつもお前でいっぱいだ・・・」 「本当に?」 こくんと頷いた高耶に直江が本当に嬉しそうに微笑むから。高耶がどれだけ男を欲しているか少しだけ教えてやる。 「お前の事だけ考えてる。離れてた間だって、今だって。・・・離れてた間はお前の匂いがしなくて不安で堪らなかった。今は・・・、この部屋もシーツもお前からだってお前の匂いがする。お前に包まれて・・・、安心してる」 そう言って男の首に腕を絡めて引き寄せる。 「お前の匂いがオレからしなくなって不安なんだ・・・。お前の匂い、オレに付けてくれよ・・・」 首筋に顔を埋めてくる高耶に眩暈がしそうになる。今夜の高耶はとても素直だ。ご褒美とばかりにその耳元で、高耶が好きな低い声で直江は囁いた。 「そんなに俺が欲しいのならいっぱいあげる。俺の匂いであなたを満たしてあげる」 「直江・・・」 「俺を煽った責任は取ってもらいますよ・・・?」 高耶さん。 そう愛おしげに名を呼ばれて高耶は震えた。久しぶりの情交の期待からか、男のこれからを想像させる声にすら感じてしまう。 胸いっぱいに男の香りを吸い込み笑みを浮かべると、ほぅと溜息をつく。その表情にも直江は煽られた。 ただでさえ2週間ぶりなのだ。そのうえ、少しの触れ合いでお預けを食らっている身にはつらいものがある。 「優しく抱いてあげたいけれど、お預け期間が長すぎましたね・・・。もう持ちそうに、ない」 少し性急になってしまいますが、我慢して。 そう言いながら締めていたネクタイを取り第2ボタンまで外した男は高耶の服を少し乱暴に脱がし始めた。 シャツのボタンを引きちぎりそうな勢いで外すと、襟元に手を差し込み肌を晒していく。そうしておいて、首筋に舌を這わせた。 「あ・・・っ」 先ほど「声を聞かせて」と言った自分の言葉を覚えているのか、素直に甘い声を聞かせてくれる高耶に笑みが浮かぶ。自分がつけた赤い跡を上から順に辿りながら、直江は滑らかな肌に口付けていく。 「ここ・・・」 「ん・・・ああっ」 少しづつ息が上がる高耶の胸を、白い肌に残る赤い軌跡を辿って乳首まで辿り付いた直江は、それをぺろりと舐めあげた。 「さっきは中途半端だったから、今度はちゃんと愛してあげる」 その言葉と共に、外気に晒されて少し尖った乳首に指を這わせる。 小さいそれを親指でそっと擦ってから人差し指も使って摘み上げ、反対の乳首もねっとりと舐めると、高耶の口から心地よい声が聞こえだした。 「あ・・・んんっ、い・・・なお・・・っ」 愛撫を施すたびに跳ねる体を押さえ付けながら、空いた手を下へと滑らせる。 ジーンズの上から撫でると、そこは既にきついほどに起ちあがっていた。 「もうこんなにして。つらかったでしょう?・・・今、楽にしてあげる」 ベルトを抜かれながら言われたその言葉に、高耶は期待した。もうきついのだ。早く外に出して欲しい。早く擦って欲しい。・・・早くイかせて欲しい。 だが、男はベルトを抜き取った後、前を少し寛がせて中に手を侵入させると下着の上から擦り始めた。 「や・・・っ、なお・・・っ!」 ただでさえきつい状態なのに、ちゃんと脱がずに男の大きい手を入れられたらもっときつくなって辛い。 男の肩を掴み、訴えてくる高耶に胸元で乳首を可愛がっていた直江は「分かっています」と頷いた。 男の唇が乳首から離れて下へ下へと移動する。臍を舌先で擽られ、下腹を手のひらで撫でられる。 その動きに、高耶はハッとした。まさか・・・。 (風呂入ってないのに・・・ッ) 止めさせようと手を伸ばした高耶は、男の髪を掴もうとして出来なかった。その前に、下着を少しずらした直江が唇で高耶の屹立の先端を食み、その小さい穴に舌がねっとりと這わされたからだ。 「あああ・・・ッ!」 脳天がしびれるような刺激に襲われ、腰が浮く。それを狙っていたかのように、ジーンズと下着が一緒に太腿の辺りまでずらされた。 幹が下着で擦れ、その刺激にも高耶は感じた。強い刺激に高耶の伸ばした手が空を彷徨う。 それに気づいた直江がその手を取ると、大丈夫だからと安心させるように指を絡ませシーツに縫いとめた。 「ふあっ!・・・んん、あ・・・・んんっ!」 先端を含んだ唇が一気に下がり、喉の奥まで迎え入れられる。挟む唇はそのままに、今度は舌が血管を舐めながら先端へと這い上がる。先端まで来た舌が敏感な括れを擽り、亀頭を上顎に押さえ付けられる。押さえ付けられたまま強く吸われ、そのまま再び奥へと飲み込まれていく。 その間、根元では男の手が絶え間なく擦り上げていて。 男の容赦ない愛撫に体が着いていけない。感じすぎてつらい。 久しぶりの激しい愛撫に涙を零し始めていた高耶のオスは限界を告げていて。 「だめ・・・・だっ、も・・・・ッアアアアッ!」 高耶はあっけなく、男の口の中に精を解き放った。 はあはあと荒い息を吐いていると、体をくるりと反転させられた。 足に纏わりついていたジーンズと下着を脱がされる。 シーツにイったばかりで敏感なソコが当たり、少し腰を浮かすと男の手でもっと高く持ち上げられた。 「や・・・っ!」 やめろ。 羞恥心からそう言おうとした高耶の言葉は、まろみを掴まれ割り開かれたことで飲み込まれた。 慎ましやかに閉じているソコのすぐ近くで男の息遣いを感じる。 焦った高耶は逃げようと目の前のシーツを掴み引き寄せるが、男の手がしっかりと腰を固定していて動けない。 「ぃやっ・・・だ・・・!」 嫌がり暴れる高耶を余所に、直江はそのまま蕾へと口付けた。暴れていた高耶が大きく震える。中に何かが注ぎ込まれるのを感じたのだ。 飲み込めなかったものが太腿を伝うのに、肌が粟立つ。 全てを注ぎきったらしい唇がやっと離れたと思ったら、次は指が侵入してきた。 「あなたのココは、あなたの精液でも本当に美味しそうに飲み込む・・・」 それまで無言だった男の声が聞こえて、高耶は安心するどころかその内容に戦慄いた。注がれていたのは先ほど男の口に放った自分の廃液だったのだ。 「あ・・・ん・・っ、ああ・・・っ」 くちゅくちゅと音を立てて指が出し入れされると、ソコがじわじわと綻び始める。 「可愛らしいお口ですね・・・。俺の指を食いちぎりそうだったのに、弛んできた・・・」 「・・・ッ」 呟くように言われた男のその言葉から、ソコを見られているのだと分かり羞恥に目の前が真っ赤に染まる。 (いやだ・・・!) 恥ずかしい部分を見られているのも嫌だ。直江の姿が見えないのも嫌だ。縋り付けるのがシーツという頼りないものしかないのも嫌だ。 男の愛撫がいつものような慈しむものではないのも、高耶を不安にさせていた。 高耶はシーツをぎゅっと掴んでいた手を離すと、時折いい所に当たる直江の指に息を詰めながら、そろそろと直江のいる方向へと伸ばす。 「な・・・お・・・っ」 伸ばした手が男の足に触れ、男が服を着たままなのにも嫌だと思う。 「ぃや」 小さく呟き、男の服をぎゅっと掴む。 「高耶さん・・・?」 それに気づいた直江が蠢かせていた指を止めた。 「か・・・おっ、お前が・・・見えないの・・・っ、やだ・・・」 少し後ろを振り返り荒い息の下から告げてくる高耶を見て、直江は自分の余裕のなさに呆れ、溜息を吐いた。 何を焦っているのだろう。 高耶はもうこの手の中に帰ってきたというのに。 「・・・すみません。性急すぎましたね」 そう言って指をゆっくりと引き抜いた。 「ん・・・っ」 その刺激に息を詰めた高耶の背を宥めるように撫でると、掴んでいた腰を開放しそっとシーツに横たえた。 「大丈夫・・・?」 「・・・バカ」 仰向けになって視線を向けてきた高耶が軽く詰ってくる。確かにその通りだから何も言えなくて、直江は苦笑した。 「すみません」 久しぶりの情交に夢中になっていた。高耶の不安に気づけないほど。 少し頭を冷やしたほうがよさそうだ。 そう思った直江が体を起こそうとした時、高耶が直江の袖に手を伸ばした。 「たか・・・」 引き寄せられて、高耶の上へと再び覆い被さる。 「匂い、つけてくれるんだろ・・・?オレのじゃなくお前のが中に欲しい・・・」 そう言われて、眩暈に襲われた。 「お願いだから、そんなに煽らないで」 苦しそうな表情を浮かべた直江が、体を起こし自らの服に手を掛けるのを高耶は熱い眼差しで見ていた。 普段禁欲的な雰囲気さえ漂わせているこの男は、服を脱ぐにつれて色気を増す。 「俺が服を脱ぐのを見るのは、そんなに感じる?」 シャツのボタンをゆっくりと外しながら、高耶の涙を零す先端をつつと指で撫でる。 「っ・・・、感じ・・・る」 だから早く。 ゆっくりと動く男に焦れるが、男の目を見て「あぁ」と高耶は溜息を洩らした。 高耶を見つめてくる男の目は、獣のようだった。 (オレだけじゃない・・・) シャツを肩から滑らせ、ゆっくりと脱ぐ。 男が殊更ゆっくりと動くのは、多分焦らしているからではない。そうする事で、高耶への衝動を抑えているのだ。 本当は気が急いているだろう。乱暴にしてしまたいだろう。 心の中はきっと高耶と同じく台風のように荒れ狂っている。 でも、さっきみたいに高耶を不安にさせたくないから。 ベルトを外し、ズボンを脱ぎ去った男が再び覆い被さり高耶の足を高々と抱えあげる。 「もう入れてもいい?」 この期に及んでそんな事を聞く男に、高耶は苦笑した。嫌なら今頃蹴り飛ばしている。 「も・・・、焦らすな・・・」 掠れた声で早くと強請る高耶に男は微笑んだ。 「ああ・・・っ、な・・・お・・・っ」 ゆっくりと入れられていく男のモノに、高耶はぶるりと体を震わせた。 (直江だ) 久しぶりでも体は男を覚えている。 綻んだソコが嬉々として男を迎え入れているのが高耶にも分かった。視線を感じ見上げると、男が繋がるソコをじっと見ていた。 「あなたのココ、俺のを嬉しそうに飲み込んでいく・・・」 「ああッ!」 半分まで入れられていたモノをくっと腰を動かされて、奥まで入れられた。高耶の体がびくんと震え、背が撓る。 (おっきい) 中で存在を主張する直江が、以前より大きく感じてしまうのは久しぶりだからだろうか。 その存在を確かめるようにきゅと下腹部に力を入れてみたら、男が「くっ」と呻いた。 「あなたという人は・・・」 悔しそうな声で呟き眉間にくっきりと皺を寄せた男に腰を掴まれ、がんっと腰を打ち付けられた。 「アアッ!」 「・・・俺をそんなに煽って。もう知りませんからね」 その言葉と共に、男は再び激しく動き始めた。 「高耶、さん・・・っ」 男に名を呼ばれて沸き起こる強い快感に飛びそうになっていた意識を繋ぐ。 激しく揺さぶられながら見上げたそこには、愛おしそうに見つめてくる直江がいた。 「な・・・お・・・っ」 手を伸ばして抱きつく。 (直江の匂い) 体温が上がったことで余計に感じられる男の香りに高耶は酔いしれた。 下肢から這い上がってくる悦楽と男の香りに包まれて、体が震え男を飲み込んでいるソコがぎゅっと締まる。 「・・・っ」 息を詰めた男が一瞬動きを止めたが、すぐに高耶のイイところ目掛けて激しく動き出す。 「や・・・っ!あ、あっ・・・!」 「いい・・・?」 聞かれてこくこくと頷く。 (イイ) 口付けてくる男に答えながら、高耶も無意識にイイところに当たるよう腰を動かす。 「ん!・・・んんっ、ふ・・・っ!」 上の口も下の口も男に塞がれて、逃げ場を失った快楽は高耶の中で螺旋を描いてどんどん上昇していく。 締め付けがきつくなって来た事に気づいた直江が口付けを解き、顔を覗き込んでくる。 「もう、イきそう?」 「・・・イ・・・きそ・・・っ」 目に涙を溜めてそう答えた高耶のオスを男が握りこむ。 新たに加わった刺激に、高耶は戦慄いた。 「ぃやッ!」 「イって」 擦りあげながら、イイところを目掛けて激しく打ち付けてくる男に高耶は堪えきれず精を迸らせた。 「アアアッ!」 「っ!」 引き絞るような内包に引き摺られるように直江もまた、己を解放する。 どくどくと中に注がれる男の精を感じながら、高耶は荒い息の下で微かに笑みを浮かべた。 (帰ってきた) 男の匂いに包まれて、男の匂いを体の中にまで擦り付けてもらって。 やっと直江の手の中に戻ったと思った。 「お帰りなさい」 ハッとして見上げると、直江が穏やかな笑みを浮かべていた。 直江も、もしかしたら今やっと高耶が戻った事を確かめられたのかもしれない。 同じ事を考えていたのなら嬉しい。 そう思いながら、高耶もまた笑みを返した。 「ただいま」 手を伸ばし男の体を引き寄せる。 首筋から強く香る男の匂いに、高耶は泣きそうになった。 |