チョコレート 直江が、高耶にバレンタインにチョコレートを下さいと言う事は決して無い。 元々、甘い物があまり好きな方ではないし、女性がひしめくチョコ売り場に、例え自分に渡すチョコを買う為とはいえ、高耶が居るのを想像しただけで、直江は嫉妬に狂いそうになるからだ。 スラリとした立ち姿に、清潔感溢れる凛とした雰囲気を持つ高耶が、年頃の女性ばかりが集まるチョコ売り場に居たりしたら。 人目を惹くどころか、その場で告白されかねない。 だから。 直江は毎年、高耶お気に入りの有名なチョコ専門店から取り寄せたチョコを高耶にプレゼントしているのだ。 今年もそのつもりで準備していたのだが。 バレンタインまであと数日というその日の夜。 「今年のバレンタインは、オレからチョコやるから」 夕飯を高耶と共にしていた直江は、目の前に座って、味噌汁を伏し目がちにコクリと飲んでいた高耶から、サラリとそう言われた。 「高耶さんから・・・ですか?」 綺麗に焼かれた焼き魚へと伸ばそうとしていた箸を止めてそう尋ね返したのは、高耶がどうして急にそんな事を言い出したのか、理由が分からなくてだったのだが。 「・・・オレがやっちゃ、何かマズイ事でもあるのか」 高耶は、照れ隠しもあるのだろう。低い声でそう言いながら、直江をじっとりと睨んできた。 そんな高耶に滅相も無い嬉しいですよと笑みを見せた直江だったが、持っていた箸を置くと「でも・・・」と口を開いた。 「どうして急に・・・?」 やはり、突然そんな事を言い出した高耶の理由が知りたかった。 毎年、バレンタインデーは直江がチョコを、ホワイトデーには高耶が甘くないクッキーを焼いてプレゼントしてくれていたのに。 高耶を見つめてそう訊ねると、その直江から視線を逸らした高耶が、 「・・・別に」 と、何故か少し顔を赤らめて、味噌汁の入った椀を再度口元に運びながら、ぼそりとそう呟いた。 結局。 そのままその話は高耶によって強制的に終了となり、バレンタイン当日を迎えたのだが。 (理由はこれか・・・) 直江の目の前。 小さなチョコを一つ咥えた高耶が、高耶の手によってベッドに押し倒された直江の上に跨り、膝立ちでにじり寄って来ている。 そんな、直江にとってはもの凄く美味しい状況に、直江の頬は緩みっぱなしなのだが。 対して、高耶はというと。 とてつもなく恥ずかしいのだろう。顔を真っ赤にさせて、泣きそうな表情で笑みを浮かべる直江を睨んでいる。 「これがしたかったんですか・・・?」 もう目の前まで来ている高耶に囁くようにそう訊ねてみると、高耶はくっと眉根を寄せて、それでも、チョコを咥えたその唇をそっと寄せてきた。 「嬉しいですね・・・」 そんな高耶に応えるべく、口を開いてチョコを迎え入れる。 それほど甘くないビターチョコ。それも、直江の為にと高耶が配慮してくれたものなのだろう。 小さなチョコと一緒に、高耶の舌も入り込んでくる。 「んぅ・・・っ」 互いに、チョコを奪い合うように舌を蠢かせ、時折、直江が高耶の舌を強く吸うと、高耶の身体から徐々に力が抜けていき、ついには直江の身体の上に落ちてきた。 「・・・このままする・・・?」 小さなチョコが溶けてなくなったのを機に、少しだけ唇を離してそう問うと、既に瞳を潤ませている高耶が、その問いには答えないまま再度唇を寄せてきた。 それを了承と取って、高耶の口付けを受けながらその身体に手を這わせ始める。 セーターの裾から手を差し入れ、滑らかなその肌の感触を楽しみながら脇をなで上げると、高耶の身体がビクリと震えた。 相変わらず感じやすいその身体に笑みが浮かびそうになる。 仕事が忙しくて、高耶の身体に最近触れていなかったのだが、どうやらそれが、今回の高耶の大胆な行動に繋がってしまったらしい。 直江が浮気しているのではとでも思ったのか。それとも、触れようとしない直江に、高耶に飽きたのではとでも思ったのか。 どちらにしろ、高耶の誤解や勘違いではあるのだが、こうやって高耶からしてくれる事は滅多にないから、直江はそれを解くことをせず、ただ高耶を味わうことに専念した。 胸へ手を移動させ、高耶が好きな胸の突起を指の腹で押し潰す。 「んっ、ん・・・っ」 ぎゅっと目を閉じた高耶が、口付けの合間に甘い吐息を零した。 何度もそこを擦って、ぷくりと硬くなってきたそこを、きゅっと摘むと。 「んぁっ」 胸を襲った刺激に耐えられなかったのか、口付けを無理矢理解いた高耶が仰け反った。 「・・・随分と感じやすいですね。俺が触ってあげなかった間、自分でしなかったの・・・?」 きゅっきゅっと摘む事を止めないままそう訊ねると、そのたびに喘ぐ高耶が身体を震わせながらこくんと小さく頷いた。 「お前が・・・っ、あっ、シてないのに、オレだけ・・・スるわけには、いかねぇだろ・・・っ」 高耶のその言葉に、直江は目を見開いた。 直江の浮気や、心変わりを疑っての行動だと思っていたが、そうではないのだろうか。 (我慢できなくなった、のか・・・?) 直江の仕事がここ最近特に忙しかったという事は、一緒に暮らしているのだから、当然高耶も知っている。 明日、久しぶりに休みが取れそうだと告げたのは、高耶がチョコの事を言い出した前の日だ。 今日まで我慢していたのは、どうやら直江だけではなかったらしい。 「・・・ずっと我慢、してたの?」 そう訊ねると、高耶はきゅっと眉根を寄せて、恥ずかしそうな表情を浮かべて再度こくんと頷いた。 「も・・・っ、いいから、早く・・・っ」 そう言った高耶に高ぶったモノを擦りつけられて、こちらも我慢を重ねていた直江の理性はあっさりと切れた。 |