風船 後編 羞恥に耐えられず、顔を真っ赤にさせて卑猥な言葉を囁くカカシから逃れようとしたイルカの身体を、カカシが抱き込んで来る。 「こぉら。どこ行くの?風船、膨らませる方法教えて欲しいんでしょ?」 そう言ったカカシに、逃がさないとでも言うようにきつく抱き込まれたイルカは焦った。 「いえっ、もういいですから・・・っ!」 「どうして?あとコレだけでしょ?」 必死にカカシの腕の中から逃げようとしているイルカに、その背後からイルカを逃がさないようにきつく抱き締めているカカシが楽しそうに囁いてくる。 「どうして逃げようとするの?オレは風船の膨らませ方を教えてあげてるだけなのに」 それを聞いたイルカは、逃げようとしていた身体をピタリと止めた。 そう言われてしまうと、逃げようにも逃げられなかった。 (意地悪されてる・・・っ) カカシに完全に意地悪をされている。 普段はとても優しいカカシの中にある意地悪な部分。 いつもは出てこない意地悪なカカシが出てきてしまっている。 こうなると、カカシの気が済むまで散々意地悪されるのを身を持って知っているイルカは、これからの自分の運命を思いその瞳に涙を浮かべると、身体から力を抜いてカカシに凭れるしかなかった。 多分、イルカが風船を膨らませるのに夢中になっていて、カカシの帰宅に気づかなかったのが悪かったのだろう。 だから、その風船を使ってこんな意地悪を。 「ほら、お口開けて・・・?」 カカシの白い指が、背後からイルカの口元へと伸びてくる。 つんつんと指先で唇を突かれて素直に口を開けると、イルカの手に持っていた風船が取られ、その先がイルカの口の中へと入れられた。 「歯を立てないようにして咥えて」 どうしても卑猥に聞こえてしまうカカシのその言葉。 羞恥に泣きそうになりながら、それでもゆっくりとした動きで風船を咥えると、ふっと笑みを浮かべたらしいカカシに「いい子だね」と小さい声で褒められた。 「イルカ先生の手、貸して?」 何をされるのか分からなくて、恐る恐る挙手するように片手を掲げると、カカシがその手を取り、カカシの顎が乗せられている肩の辺りへとゆっくり引き寄せた。 「・・・っ!」 危うく口に咥えている風船を落としてしまうところだった。 自分の視界からその手が消えると同時に、親指が暖かい粘膜に包まれたのだ。 (咥えてる・・・っ) カカシがその口で、イルカの指を咥えている。 蠢く舌が、ねっとりとイルカの親指の爪を舐める。そのまま上顎に指の腹を強く押し当てられる。 そうして。 「ん・・・っ」 じゅっときつく吸われて、あらぬ事を想像したイルカから甘い吐息が漏れた。 下腹部にジンと痺れが走る。 もう何度もされた事のある口淫をまざまざと思い起こさせるカカシの舌の動きに、羞恥に身悶えるイルカの中にポツと火照りが生まれる。 親指を口に含まれているだけなのに、まるで自分の性器を含まれているような感覚を覚える。 カカシが口を開き、あっさりとイルカの指を解放する。 「・・・オレがしたのと同じこと、コレにしてみて?舌と上顎で挟んで、強く吸って」 ツンツンとイルカの口から伸びている風船の端を引っ張られて我に返ったイルカは、慌ててこくんと頷くと、口の中にある風船の先端を舌と上顎で挟み、強く吸い上げた。 イルカの咥内でぷくりと風船が丸く膨らみ始める。 「大きくなってきた?いっぱい吸うと、もっと大きくなるから頑張って」 イルカの耳に届くカカシの言葉はもう、カカシのモノを口にしている時の言葉にしか聞こえてこなくて。 口の中にあるものは風船なのだという事を忘れ、まるでカカシのモノを育て上げるかのように一生懸命吸い付いて大きくしていく。 「大きくなったら、小さくならないように根元をきつく押さえて、口から出して」 口いっぱいに風船が膨らんだところでカカシにそう言われたイルカは、きつく吸い上げ過ぎた事で酸素不足に陥り、涙目になりながらもこくんと頷いた。 そうして、口から出ている部分を指できつく押さえ、口を大きく開いて咥内で大きく育った風船を取り出す。 「あぁ、凄く大きくなったね。上手だ」 よしよしと頭を撫でられて、嬉しくなったイルカは口元に小さく笑みを浮かべた。 「後は、こっちから空気を入れるだけですよ」 カカシがイルカの手から風船を奪い取り、先ほどとは反対の口をイルカの口元に向けてくる。 「いっぱい、ふぅってしてね?」 こんな風に。 耳元でそう言ったカカシからふぅと息を吹きかけられて、びくんと震えたイルカの身体がさらに火照る。 「はい・・・」 差し出された風船の口を含んで息を吹きかけると、するするとそれほど力を入れずとも空気が入っていき、風船が膨らんでいった。 風船が膨らんだのを確認したカカシがイルカの口から風船を取り、口を縛って器用に犬を作り始める。 カカシに凭れながらそれをぼんやりと見ているイルカはもう、身体が火照ってどうしようもないところまで来てしまっていた。 カカシに吸い付かれた指を口元に持っていって、自分の咥内に含んでみる。 カカシにされたのと同じように、舌と上顎で挟んでじゅっと吸い上げてみるが、カカシにされた時と同じような快感は得られなかった。 それに、口の中で大きくならない指がつまらないとも思えた。 口が寂しくて仕方がない。 「・・・膨らませ方、覚えた?」 「あ・・・」 犬を作り終え、それを卓袱台に置いたカカシが、イルカが咥えている指を抜き取りながらそう訊ねてくる。 口から指を抜かれて口寂しさが増し、イルカの口から指を惜しむ声が漏れた。 それを耳聡く聞きつけて小さく笑みを浮かべたカカシが、凭れるイルカの身体を抱き寄せ、その耳元で囁く。 「・・・もっと練習する・・・?」 もう風船はない。 だから、今度は別な練習。 相当恥ずかしかったけれど、でも、カカシの言葉に煽られて火照った身体と、口寂しさに負けたイルカはこくんと頷いた。 その翌日。 アカデミーでのクリスマス会で、風船で出来た犬の飾りを見ては真っ赤になるイルカが見られたという。 |