新妻イルカ観察日記 3 蜜月の障害 イルカと知り合う以前、カカシはバレンタインというものはどうにも苦手だった。 甘いものが嫌いなカカシにとっては、バレンタインに渡される大量のチョコは迷惑以外の何者でもないからだ。 そんなカカシの事を良く分かっているイルカは、バレンタインにはチョコではなく、カカシの好きな酒を用意して一緒に飲んでくれる。 しみじみ、イルカは出来た奥さんだとカカシは思う。 バレンタインの夜に二人で飲む特別な酒が、カカシにとってはチョコよりも甘く幸せな味で、イルカと共にあるようになってから、カカシはバレンタインが楽しみで仕方が無くなった。 そんな、イルカと過ごす甘いバレンタインの夜を、カカシはとても楽しみにしていたというのに。 「・・・任務、ですか」 「・・・そうじゃ。おぬしなら軽いじゃろう?」 バレンタインまであと一週間となったその日、カカシは三代目火影の執務室に緊急招集で呼び出されていた。 何かあったかと行ってみれば、緊急の任務だという。 三代目から直接言い渡されるという事は、それはSランク任務に他ならない。 (・・・絶対わざとだな・・・) 口に咥えた煙管から、紫色の混じる煙をくゆらせながら、カカシへと鋭い視線を向けてくる三代目火影は、カカシにとっては、いわゆる舅だ。 イルカを可愛がるあまり、夫であるカカシをあまり快く思っていない。 いつものカカシの好きな酒が手に入らないと嘆いていたイルカが、三代目に口を利いてもらってみますと言ったのは数日前の事。 そして、三代目にお願いして譲って貰えましたと、嬉しそうにイルカが言ってきたのはつい先日だ。 (・・・ま、気持ちは分からないでもないけどね・・・) あまり快く思っていないカカシの為の酒を、たとえ可愛いイルカの願いとはいえ用意してしまったのが癪なのだろう。 言い渡された任務の帰還予定は、バレンタインを軽く過ぎている。 が、カカシならぎりぎり間に合わないことも無い。 あの酒をイルカと共に飲みたいのなら、これくらいの任務軽くこなして来いという事なのだろう。 三代目も大概大人気ないと思うが、三代目が大事にしていたイルカを嫁にと望んだのはカカシであるからして、カカシは文句も言わず「承知」と告げ、その依頼書を受け取った。 そうして、イルカにはバレンタインには必ず帰りますからとだけ告げて、少し長い任務に向かったのだが。 息を荒げたイルカが、ついに耐え切れなくなったのか、がくりとシーツに肘を付く。 汗ばんだその背を見つめながら、こちらも汗ばむその顔に小さく笑みを浮かべたカカシは、ハァと艶やかな吐息を零した。 (逆効果だったな・・・) 三代目の意地悪は、逆効果にしかならなかった。 何とかバレンタインまでに無事任務を完遂させたカカシは、バレンタイン当日の夜にようやく自宅へと戻ることが出来た。 ただいまと言って帰宅したカカシに、出迎えてくれたイルカは、それはそれは嬉しそうな笑顔でお帰りなさいと抱きついてくれた。 もしかしたら、今日は帰って来れないのかもしれないと思いつつも、酒を用意して待っていたんですといじらしい事を言うイルカに我慢が出来ず、酒を飲む事よりもイルカを味わう事をカカシは優先させた。 それまで蜜月を過ごしていた二人に突如訪れた会えなかった期間は、二人をより燃え上がらせる結果となった。 そうして、可愛らしく恥らうイルカを散々啼かせ、共に果てたのはつい先ほどの事だ。 なのだが。 (・・・ちょっと足りない・・・) がっついたのが良くなかったのだろうか。イルカの最奥にたっぷりと精を吐き出したのにも関わらず、カカシは充分な満足感を得る事が出来ず、少し困っていた。 ゆっくりと身体を起こして、その事で中のカカシの角度が変わったのか戦慄くイルカの、汗ばんだ背中を掌で擦って宥めつつ、どうしようかと思案する。 このまま続けてもう一度したとしても、恐らくイルカは嫌がらない。 嫌がらないのは分かっているのだが、明日、イルカは朝から受付所勤務が入っていると言っていなかっただろうか。 したいのはやまやまだが、イルカの負担を考えるとこれ以上は止めておいた方がいいかもしれない。 そんな事を考えながら、まだ勢いを失っていない怒張を引き抜くため、少し腰を引いた時だった。 (・・・ッ!) イルカの秘所が少し捲れて内部の赤い秘肉が露になり、そこからこぷりと溢れ出した白濁した体液が、とろりとろりとイルカの引き締まった太腿を伝って落ちていく。 その太腿にはカカシがつけた、たくさんの華が散っていて。 (・・・どうしよう・・・) そんな、愚息直撃な情景を見せられたカカシは、再び迷い始めてしまった。 少し引き抜いていた赤黒い怒張を、ゆっくりとイルカの中へと突き戻す。 それを何度も繰り返す。 イルカの官能を引き出す事はしないで、後戯のような動きをするカカシを、まだ息の荒いイルカがゆっくりと振り返った。 その潤んだ瞳に疑問が浮かんでいる。 (ちょっと足りなくて、迷っているんですよ) 少し苦笑して視線だけでそう告げてみると、かぁと全身を赤らめたイルカが慌てて前を向いた。 そんなイルカに苦笑して、再度ゆるゆると腰を揺らめかせていたカカシだったのだが。 やはりイルカの負担が大きいし、今日はこれで止めておこうとカカシがその腰の動きをピタリと止めた時。 イルカの腰がもぞと動いた。 動きを止めたカカシの代わりに、今度はイルカが腰を揺らめかせ始める。 おや?と、少し身体を横に傾けてイルカの表情を窺おうとしたら、そんなカカシに気づいたのか、イルカが慌てて反対側を向いてしまい、その表情が窺えなくなる。 だが。 (・・・真っ赤だ) イルカの下ろした髪の合間から覗くうなじが、真っ赤に染まっている。 それに気付いてしまったカカシは、ふと笑みを浮かべた。 どうやら足りないと思っていたのは、カカシだけではなかったらしい。 起こしていた身体を、ゆっくりとイルカの背中へ倒す。 「ん・・・っ」 中で変わるカカシの角度に快感を覚えたのか、イルカが吐息を零す。それは甘く艶やかなもので。 「もう一度、してもいい・・・?」 イルカの動きに合わせて再度腰を揺らめかせ始めたカカシがそう訊ねると、イルカの内部が嬉しそうにきゅっと締まった。 少しだけ振り返ったイルカが、恥ずかしいのかカカシに視線を合わせないまま、 「はい・・・」 と答えてくれた事で、それまで優しかった動きを激しくさせる。 途端にイルカの背がしなる様を熱い眼差しで見つめながら、カカシは再度イルカを散々に啼かせたのだが。 その翌日、腰がつらそうなイルカを抱えて受付所まで送って行ったカカシは、そこにいた三代目に散々怒鳴られる事となる。 |