新妻イルカ観察日記 6 愛しい嘘 互いに嘘は吐かない。 結婚する際、二人で決めたいくつかの決め事の一つだ。 心から愛しく思う人に、嘘を吐く事だけはしたくない。 忍という習性上、嘘を吐く事にどうしても慣れてしまっている二人だから。 互いに嘘だけは吐かない。 そう決めていたのだが。 腕の中のイルカが震えている。 夕方、カカシが自宅へ帰ってすぐ、泣きそうな顔をしたイルカが何も言わず飛びついてきた。 どうかしたのかと聞かずとも分かった。 カカシには、イルカがそんな顔をする理由に覚えがあったからだ。 (もう聞いたのか・・・) 昼間の緊急招集で、カカシは三代目より任務を言い渡されていた。 明日の早朝、カカシは前線へと向かう。 少し難しい任務だ。 いつもは「軽い軽い」と言う三代目が、「必ず帰って来い」と言ったくらいには。 イルカの夫であるカカシを、舅である三代目は快く思っていないというカカシの考えは、どうやら少々間違っていたらしい。 ふと笑みを浮かべたカカシに、三代目は「イルカを泣かす事だけは許さんからな」と付け加えた。 その言葉の重みに気付いたカカシはスッと笑みを消し、「承知」と力強い声でそう告げてその任務を受けた。 受付所に勤務するイルカだから、情報はすぐに入ってくるだろうとは思っていた。 出来れば帰還するまで知らないままで居て欲しかったと思ってしまうのは、イルカを不安にさせたくなかったカカシの我侭だ。 イルカをソファに座らせ、額当てを取り口布を下ろしながらその隣にカカシも座ると、腕の中で震えるその背を擦った。 大丈夫、大丈夫と言うように。 「・・・明日の早朝、任務に向かいます」 腕の中のイルカが、カカシのその言葉にビクリと震える。 「ちょっと大変そうだけど、すぐに帰ってきますよ」 囁くようにそう告げると、それを聞いたイルカが少し身体を離した。 涙こそ流してはいなかったが、カカシを見つめる瞳が潤んでいる。それに目元が赤い。 もしかすると、カカシが帰ってくるまでの間、不安で泣いていたのかもしれない。 僅かに眉根を寄せ、イルカの目元を指先でそっと撫でる。 すると、震えるイルカの唇が開いた。 「帰って・・・っ、帰ってこなかったら、俺、すぐに再婚しますから・・・っ」 搾り出すように告げられたその言葉に、カカシはその瞳を見張った。 驚いた。イルカからそんな言葉が出るとは思わなかった。 「カカシ様の事なんて、すぐに忘れます・・・っ」 カカシが見つめる中、続けるイルカの声が震え出し、その瞳にじわりと涙が浮かぶ。 「すぐに・・・っ、すぐ・・・っ」 さらに続けようとしていたイルカが、その途中でくしゃりと顔を歪め、言葉に詰まってしまう。 それを見たカカシは、咄嗟にイルカの首の後ろに手を回し、涙が零れ始めたその顔を自らの肩へと強く押し当てていた。 じわりじわりと濡れる肩の温もりが、縋るように回された背中の震えるイルカの手が、切ないほどに愛しい。 (すぐになんて・・・) カカシには分かってしまった。 告げられたイルカのその言葉は、全て嘘だという事が。 カカシが帰ってこなかったら、イルカはきっと、一生独りでいるのだろう。 一生カカシの事だけを想い、カカシだけを愛し続ける。 結婚する時、イルカはそう誓ってくれた。 可愛らしくて切ないイルカの嘘に、カカシの胸がイルカへの想いでいっぱいになる。 (・・・必ず帰る) 愛するイルカの為、任務に就く時はいつだってそう思っているカカシだが、今回程強くそう思った事はない。 こんなにも可愛らしい嘘を吐くイルカを、独りに出来るはずがない。 「・・・それは困るなぁ」 ひっくひっくとしゃくり上げながらも、懸命に声を押し殺して泣いているイルカの背をポンポンと叩く。 「・・・オレだけ一生愛して・・・?」 そう耳元で囁いた途端、「それなら・・・っ」と言って顔を上げたイルカの唇を、カカシは沸き起こる愛情の念からすぐさま自らの唇で塞いでいた。 「んぅ・・・ッ」 イルカの震える舌をきつく吸い上げ、絡ませる。 荒々しいカカシの舌の動きにも、イルカは懸命について来ようとしている。 口付けたままイルカのアンダーの裾から手を差し入れ、背中の傷を指先で愛撫する。 「ん・・・っ、んッ、ん・・・っ」 首の後ろに回されたイルカの腕が、カカシをより引き寄せる。イルカから漏れる甘い吐息にたまらなくなる。 ソファに押し倒し、イルカのズボンを荒々しく剥ぎ取る合間も、カカシは口付けを解かなかった。 腰の後ろにあるポーチを探り、そこから軟膏を取り出すと、カカシはイルカに口付けたまま片手でそれを開け始めた。 そうしながら、もう片方の手でイルカの中心を探る。そこはカカシの愛撫を求め、高ぶり始めていた。 「んんッ!」 掌で握り込んだ途端、イルカの身体が跳ねる。扱き始めると、すぐに掌を押し返すほどになるイルカの分身が愛しい。 蓋を取り去った入れ物から、軟膏を指先にたっぷりと絡め取る。用の無くなった入れ物をソファの下に落とすと、カカシは指先の軟膏をイルカの秘孔へと塗り付けた。 冷たかったのかイルカの身体が戦慄くのを、その舌を吸い上げる事で宥める。 ぬるりと中に侵入し、そこを性急に解していくカカシの指を、イルカの秘孔が早くと言うように収縮して締め付けてくる。 毎日のようにカカシを受け入れているイルカの秘孔は、すぐに柔らかく解けた。 指を引き抜き、同時に口付けも解く。 身体を起こしてズボンの前を寛げるカカシを、荒い息を吐いているイルカがその頭上にあるクッションをきつく握り締め、涙目で見上げてくる。 その唇が微かに動いているのに気付いたカカシは、こちらも荒い息を吐くその唇にふと笑みを浮かべた。 早く、早く。 声には出していないが、イルカはそう言っていた。 下半身をしどけなく晒し、上半身だけは服を着たままのイルカに煽られ、忍服を脱ぐ暇も、脱がせる暇も惜しい。 「そんなに焦らないで」 自分の方が焦っているというのにそんな事を言って、カカシはズボンの前だけを寛げた状態でイルカの片足を肩へと抱え上げた。 下着の中から取り出した、イルカを求め猛り切った雄を掌に支え持つ。 張り詰めた先端を軟膏で滑るイルカの秘孔へと押し当てると、イルカの秘肉が収縮し、先端を柔らかく食んでくれた。 「今、あげるから・・・ッ」 「アアア・・・ッ!」 中へと突き入った途端、嬉々として絡み付いてくるイルカの秘肉。 ズンと一気に最奥まで腰を押し込み、その内部を味わう。そのまま腰を大きく振り始めたカカシに、イルカがその腕を伸ばし、首へと絡ませ抱きついてくる。 「や・・・っ、もっと・・・ッ」 ずるりと刀身を抜いていくカカシへ、イルカがそんな事を言う。 その言葉にくっと眉根を寄せたカカシは、先端近くまで抜いていた刀身をイルカの中へと再度突き入れた。 「ああッ!あ・・・ッ、ぁん・・・ッ!」 「いっぱい愛してあげる。・・・絶対にすぐ帰ってくるから。だから、泣かないで待っていて。・・・ね?」 イルカを見つめる瞳を切なく眇め、腰を振りながら荒々しい息の下そう告げるカカシに、イルカがくしゃりと顔を歪める。 そうして、小さく笑みを浮かべてこくこくと頷くイルカが愛しい。 再度溢れそうになっているイルカの涙を吸い取りながら、カカシは心の奥底から沸き起こる想いの丈を、イルカの身体へと思う存分ぶつけた。 それから数日後。 少々不利な戦況であったのにも関わらず、カカシは任地先の前線に於いて見事に勝利を収めてみせた。 短期間で終わらせられたのも、笑顔の可愛らしい愛妻が自分を待っていると思えばこそ。 そんな事を思いながら帰還したカカシを大門の前で出迎えてくれたのは、笑顔の可愛らしいイルカではなく。 あれほど泣かないで待っていてと言ったのにも関わらず、泣きじゃくりながら待ってくれていた愛しい愛しいイルカだった。 |