新妻イルカ観察日記 8
2009年カカ誕企画
残さず食べて






冗談のつもりだった。
数日前、「誕生日には何が食べたいですか?」とイルカに訊ねられ、「積極的な奥さんが食べたいです」と冗談交じりに告げたカカシの言葉。
それが、まさか本当に現実になろうとは思ってもいなかった。
「イルカ先生、大丈夫・・・?」
カカシの上に乗り、息を詰めているイルカの辛そうなその表情に、願ったのは自分だというのに可哀想になってくる。カカシの問い掛けに小さく頷いたイルカが、短く息を吐き出しながら、猛り切ったカカシの熱欲を身の内へと受け入れていく。
充分に解したとは言え、そこは本来受け入れるように出来てはいない。傷付かないようにと、普段のカカシは細心の注意を払って自らの熱欲をそこに埋める。
だが、積極的なイルカが見せる痴態に暴れ出そうとする本能を抑えるので精一杯で、今日のカカシはイルカの身体を気遣う余裕があまり無い。
「焦らないでゆっくり挿れて・・・?傷が付いちゃう」
熱い息を吐き出しながら、急ごうとするイルカにそう告げる。目尻に涙を滲ませながらこくこくと頷くイルカに、思うがまま突き上げそうになる身体を懸命に抑える。
(・・・すごいな・・・)
絶景とはこういう事を言うのではないだろうか。
羞恥にだろう。全身を真っ赤にさせたイルカが、カカシの熱欲を美味しそうに食んでいく様子が、カカシの深蒼の瞳にはっきりと映し出されている。
潤滑剤で解したイルカの秘孔はとろりとした液体で濡れ光っており、その熱欲は辛そうなその表情とは裏腹に天高くそびえ立ち、ふるふると震えていた。
ちゃんと解さないとという名目の下、散々焦らされていたイルカだ。もしかすると、早く挿れたいのかもしれない。
半ば程まできたところで、イルカが天を見上げた。恍惚とした表情で大きく息を吐き出しながら残りを挿入していくその姿に、カカシの背筋を快感という名の痺れが駆け上がっていき、カカシはきつく眉根を寄せた。
「・・・はい・・・った・・・っ」
互いの身体がぴたりと合わさり、イルカが大きな溜息と共に嬉しそうな笑みを浮かべる。
夜の営みには不釣合いな達成感溢れる笑顔を見せられ、カカシはその顔に愛しさからふと柔らかな笑みを浮かべていた。
「・・・ん。イルカ先生はお利口さんだね。ちゃんと全部食べられた」
汗が伝うイルカの頬を褒めるように擽りながらそんな事を言ってみると、イルカの顔がかぁと羞恥に染まる。
カカシの上に自ら乗るという大胆な事をしているのにも関わらず、相変わらず初心なその反応が可愛らしい。カカシはふと笑みを浮かべると、イルカの僅かに震える太腿にそっと手を置いた。ゆっくりとその掌を滑らせる。
「ん・・・っ」
敏感なイルカが息を詰める。中もそれに連動するようにカカシの欲を扱き上げ、カカシは瞬間詰めた息をゆっくりと吐き出した。
このままでも充分気持ちいいが、出来れば動いて欲しい。今日のカカシは動いてはいけないと言われている。
―――今日は俺がカカシ様を気持ちよくさせますから、動いちゃ駄目です・・・っ。
かなりの恥ずかしがり屋なのに、羞恥に顔を真っ赤に染めた可愛らしい奥さんにそんな事を言われてしまったカカシは、そのまま押し倒したい衝動を抑えるのにかなり苦労した。
「イルカ先生、動ける・・・?」
「は、い・・・」
小さくそう訊ねてみると、イルカは躊躇いながらも一つ頷き、カカシの腹にその手を置いた。ゆっくりと身体を揺らめかせ始め、その蠢く内壁がカカシの熱欲を淫らに扱いていく。
「ん・・・っ、ん・・・ッ」
結婚するまで殆どと言っていいほど何も知らなかったイルカに、あらゆる性技を教え込んだのはカカシだ。
イルカの身体は、雫を次から次へと溢れさせている熱欲へは触れずとも、中への刺激だけで遂情出来るよう淫らに仕上げてある。
「ぁあ・・・っ、ゃあッ、ん・・・っ」
止められなくなって来たのだろう。内部の快楽点にカカシの張り詰めた先端をしきりに擦り付けるイルカが、いやいやと首を振り始める。その姿を熱い眼差しで見上げるカカシは、汗が滲むその顔にふと卑猥な笑みを浮かべていた。
イルカの可愛らしい所は、そんな自分の身体に戸惑いを感じている所だ。淫らな身体に初心な心を持ったままのイルカが、恥らいながらも快楽に耽る様は凶悪的な程に可愛らしい。
「・・・気持ちイイの?」
「・・・ッ!」
そう訊ねてみると、途端にイルカの身体がビクンと跳ねた。
素直になって構わないというのに、下ろした黒髪を乱して首を振り、違うと懸命に否定するイルカが可愛くて堪らない。
叱られでもしたかのように、泣きそうな顔をしてカカシを伺ってくるイルカのその姿に、カカシはもう理性を保つ事が出来なかった。
腹筋だけを使い、上半身を起こす。
「ひぁ・・・アアアッ!」
急に中の角度が変わった事で、高い嬌声を上げながら背を仰け反らせるイルカの身体を抱き締め、その耳元で「ゴメンね」と謝る。
「イルカ先生が可愛すぎて我慢出来ない。動くよ・・・っ」
イルカの腰を掴み締めたカカシは、そう宣言し、その身体を激しく突き上げ始めた。




軽くシャワーを浴びた後、濡れた銀髪を拭きながら寝室へと戻る。
ベッドにゆっくりと腰掛け、そこで心地良さそうに眠るイルカの黒髪を優しく撫でるカカシの瞳が、ふと柔らかく細められる。
誕生日だからと、いつも以上に頑張ってくれたのだろうイルカが愛しい。
―――カカ、シ・・・さま・・・っ。
カカシに激しく愛されながら、カカシの名を懸命に呼ぶイルカのその瞳は、カカシへの愛情を言葉よりも雄弁に語ってくれた。
(愛されちゃってるよねぇ・・・)
カカシの口元に嬉しさからふと笑みが浮かぶ。
喘ぎ過ぎたからだろう。少し乾いてしまっているイルカの唇にそっと口付ける。
「・・・オレも愛してますよ、オレの可愛い奥さん・・・」
眠るイルカの頬を擽りながらそう囁き、カカシはベッドの中へと潜り込んだ。暖かいイルカの身体を抱き込む。すると。
「ん・・・」
腕の中に捕らえた途端、イルカがもぞもぞと身動ぎ、いつもの位置に収まった。ゆっくりと息を吐き出し、その顔に微かに笑みを浮かべる。
そうして安心し切ったような顔をして眠るイルカに、カカシはつい、小さく笑ってしまっていた。
たくさんの幸せをくれるイルカの身体を腕に抱き、その瞳をそっと閉じる。
来年も再来年も、その先も。
イルカが愛し続けてくれる事を祈り、イルカを愛し続けようと誓いながら、カカシは幸せな眠りへとその身を投じた。