3万打お礼 頑張るあなたの為に ブログでちょこっと書いたお話のカカシ目線になっております。 アカデミーの校舎の一角。 そこにいつまでも明かりが点いているのを、カカシはその日も少し淋しい思いで見つめていた。 目を凝らせば、いつもは愛らしい表情を浮かべているイルカが、どこか難しい顔をして何かを書類に書き込む姿が見える。 もう夜も遅くなってきたというのに、イルカが帰る気配は少しも無い。 (今日も午前様かな・・・) 中庭にある大きな木の幹に凭れ空を見上げて、満月に近い月のその位置から時刻を知ると、カカシは小さく溜息を吐いた。 こうやってイルカの姿を遠くから眺めるのも、もう何日目になるだろう。 最初にここから見上げた月は細かった覚えがあるから、結構な日数が経っているのに違いない。 イルカが仕事を頑張っているその姿を、初めの数日は心の中で励ましながら見つめていたカカシだったのだが。 時折、無意識なのかイルカがそっと自らの指をその唇に這わせるのを見ていると、何度もそこに口付けた事のあるカカシは、どうしてもそこにキスしたくなっていて。 今も、考え込むイルカが指を唇に持っていくのを見て、カカシは自分の指でイルカと同じように、口布の上から自らの唇に触れた。 そうして、ゆっくりとなぞる。 イルカの唇を思い出しながら。 (キス、したいねぇ・・・) あのふっくらとした暖かい唇に口付けたい。 もちろんそれだけじゃなく、その暖かい体でこんなにも冷えてしまっている心を暖め直して欲しいと思う。 でも、仕事が終わるまでは会えないとイルカ本人に言われてしまったから。 毎日毎日、こんなに夜遅くまで頑張って仕事をしているイルカの邪魔をしたくないカカシは我慢しているのだ。 会えないというのはどうしても我慢できなくて、こうやってこっそりイルカの姿を見に来てしまっているが。 (まだ帰らないのかな・・・) 今日は夕飯も食べずに頑張っているイルカに、少し心配になってくる。 泣きそうな顔をしたイルカから仕事が忙しくてしばらく会えないと言われた時、「体に気をつけて」と言って口付けたカカシの言葉をきちんと守っているのか、イルカはいつもアカデミーに弁当を持ち込んで、しっかり食事だけは摂るようにしていたのに。 本当は、その弁当だってカカシが作って差し入れてやりたいくらいだったのだけれど。 会ってしまったら、きっとダメだから。 ずっと一緒にいたいと思ってしまうから我慢した。 イルカが会えないと言ったのも、きっとカカシと同じく会ってしまったら仕事に手が付かないと思っての事だろう。 仕事で会えない、なんて。 いつもならカカシがイルカにしている事だから、イルカからされるなんて思ってもいなくて、初めのうちは新鮮だったのだけれど。 (こんなにつらかったんだね・・・) カカシはイルカに会えなかった一日目で早くも音を上げた。 それ以来、任務の入っていない日はこうやってイルカを見つめている。 イルカはカカシが任務で何日も里を空けている間、会いたくても会えないのに。 あの淋しがり屋のイルカが。 淋しいなんて一言も言わず、任務に向かうカカシをいつも笑顔で送り出してくれていたのだ。 とても愛されているのだと思う。 いつも高ランクの任務に向かうカカシの負担にならないよう、自分の心を押し殺してまで笑顔を浮かべくれていたイルカの、その愛情には頭が下がる思いだ。 そして、その強さにも。 カカシよりもずっと強いその心は、カカシのとても好きな所なのだけれど。 その心が疲れたりしないよう、カカシが一緒にいる時くらいはカカシが癒してあげられたらと思う。 (夜食、作って待ってるよ) イルカがぱぁと嬉しそうな笑みを浮かべて机から顔を上げたのを見て、仕事が終わったのだと確信したカカシは、片づけを始めたイルカに心の中でそう告げると、イルカの家に向かう為に踵を返した。 ずっとかかりきりだった仕事を今日中に終わらせるために、イルカは夕飯も食べずにこんな時間まで頑張っていたのに違いないのだ。 きっと、早く仕事を終わらせてカカシに会いたいと思ってくれていたのだろう。 そんな可愛いイルカの為に今のカカシが出来る事といったら、イルカの大好物を作って家で待っている事くらいだ。 美味しいものをお腹一杯食べさせて、そうしていっぱいキスをして。 おまけに、ちょっとだけ触らせて貰ってもいいだろうか。 毎日こんなに遅くまで頑張っていたイルカだから、疲れているだろうし明日も仕事があるのだろうけれど。 少しだけ触れさせて欲しい。 イルカと何日も一緒にいられなくて淋しかったし、イルカの深い愛情をこんな形ではあったけれど知ってしまったから。 カカシの心の中は今、イルカへの愛情や恋情、それに劣情でいっぱいになっている。 一緒にいる時くらいは癒してあげたいと思うけれど。 (それはまた今度・・・ね?) くすと小さく微笑みながら、イルカの家に合鍵を使ってあがりこむと。 「さぁて。何を作るかな」 カカシはベストを脱いで袖を捲り上げながら、いつもたっぷり食材が詰まっているイルカの家の冷蔵庫を覗き込んだのだった。 |
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