夏祭り 1
本当は11526(いいイルカ番)なんだけど、11527でめっちゃ惜しかったですねリク





木の葉の里では、大きい夏祭りが二度開催される。
納涼祭りと、豊穣祭り。
納涼祭りはもう終わってしまっているが、豊穣祭りは残暑厳しい9月に行われる。

(面倒だねぇ・・・)
上忍待機所でソファに座り、手にしたプリントを眺めながら、カカシはがしがしと頭をかいた。
夏祭りの存在はカカシも知ってはいたが、上忍師が監督として行かなければならないなんて、今年の春から上忍師になったばかりのカカシは初めて知った。
面倒だとは思うが、これも上忍師としての仕事だ。仕方ないだろう。
プリントには、豊穣祭りの日程と説明。それに、監督者である上忍師とアカデミー教師の名前がずらりと並んでいる。
その中に気になっている人の名前を見つけて、カカシはそっとその名前を指でなぞった。
(イルカ先生も一緒なのか)
その人の笑顔を思い浮かべて沸き起こるこの感情を、最近カカシは少し持て余し気味なのだが。
上忍師になった春に知り合ったイルカに、カカシは好意を持っている。
それが恋愛感情から来るものなのだと気づいたのはつい最近で。
最近は、受付所でイルカを見かけるたびに高鳴る鼓動を抑えられない。
ついつい、子供達の話をダシにして何かと声を掛けてしまっているのだが、そんなカカシの話をイルカはいつも嬉しそうに聞いてくれているから、多分嫌われてはいないと思う。
「カカシ先生?」
イルカの事を考えていたから、聞こえてきたその声についに幻聴までと思ったが、イルカ本人にひょいと顔を覗き込まれて驚いた。顔には出さなかったが。
「イルカ先生じゃないですか。どうしたんですか?あ、もしかして任務?」
上忍待機所にイルカが来たという事は、何か緊急任務でも入ったのだろうかとそう聞いたカカシに、イルカはふると首を振るとカカシが持つ紙を覗き込んだ。
「そのプリント、豊穣祭りのですよね?ちょうど良かった。その事でお話があって。前回の納涼祭りは、カカシ先生だけ任務でいらっしゃらなかったので説明を。それに、今年初めてですよね?監督任務」
「あぁ、そっか」
前回の納涼祭りの時は、写輪眼が必要な任務が入って里を離れていたから、参加できなかったのだ。
カカシの為にわざわざイルカが説明に来てくれたのが嬉しくて笑みを浮かべると、立ったまま説明を始めようとするイルカにソファを勧めた。
「ありがとうございます。さっそくですが・・・」
カカシのすぐ隣に座って、手元の書類を見ながら説明を始めるイルカをこっそり盗み見る。
こんなに近くでイルカを見る機会なんて少ないから、後れ毛が跳ねるうなじや、可愛らしい耳殻、それに、視線を落とすと意外と長い黒い睫などを眺めた。
(可愛いなぁ)
そんな事を考えていると、不意にイルカがこちらを向いた。
至近距離で合う視線に囚われる。
「・・・カカシ先生聞いてます?」
全く相槌を打たないカカシを不審に思ったのか、そう言ってじとりと睨んでくるイルカに苦笑した。
「あぁ、ゴメンね。ちょっとイルカ先生の可愛いうなじに見とれてた」
本当の事を冗談めかしてそう言えば、かぁと赤くなったイルカがガバッとうなじを手で押さえて俯き、ぼそぼそと「またそんな冗談」とか何とか小さい声で呟く。
(冗談じゃないんだけどね・・・)
からかう様に言ってしまうのは、本心を言えないカカシの照れ隠しだ。
いつもそうやって冗談としか受け取ってくれないイルカに、少し淋しいと思ってしまう。そう受け取るように言っているのはカカシの方だというのに。
「ほら、説明して?」
恥ずかしいのか、いつまでも俯いていて顔をあげようとしないイルカが可哀想になって、トントンと書類を指で叩いて急かすと、ムッとした表情で顔をあげたイルカが再び説明を始めた。
「・・・監督任務についてですが。基本、ツーマンセルで会場内を巡回して頂きます。子供達がハメを外しすぎないよう、監視監督していただく事が今回の任務内容です。と言っても、せっかくのお祭りですからカカシ先生も楽しんで下さい」
女性と一緒になんて事はご遠慮願いますが。
つんとした声でそんな事を言うイルカに、カカシはちょっと悲しいなんて思ってしまった。
(オレってそんな印象なんですね・・・)
全然相手にされていないどころか、ちょっと不誠実な男というイメージをイルカが持っているような感じがして落ち込む。
でも、まぁそれも仕方ないかとは思う。
これまでのカカシの所業は、イルカの耳にも入っているのだろうから。
「分かりました。それで、オレは誰と組むんですか?」
イルカがいいなぁと思いながら聞いてみたら、「俺です」と希望通りの答えが返ってきて驚いた。
「カカシ先生は、今回が初めての参加ですから何かと分からない事も多いでしょうし。女性と組まれると、監督任務になりそうにないので俺が立候補させて頂きました。俺は実行委員会もやってるので、一番祭りの事に詳しいですから」
呆けたような顔をして黙ったままイルカを見つめているカカシに、イルカが眉間に皺を寄せた。
「・・・何ですか?」
「イルカ先生が、オレと組みたいって言ってくれたの?」
「な・・・っ、違いますよっ。俺があなたと組みたかった訳じゃなくて、仕方なくです!」
真っ赤になったイルカが可愛いと思う余裕も無い。
どうしよう。
(イルカ先生自ら立候補してくれたなんて)
嬉しすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
「やだなぁ、そんなに照れなくてもいいのに」
くふくふと笑いながら、そう言えば、
「照れてませんッ!」
と、真っ赤な顔をしたイルカに怒鳴られた。