トリック・オア・トリート 後編






「ああ、ん・・・ッ」
カカシの上で気持ち良さそうに舞踊るイルカを、時折下から突き上げるたび、イルカがその艶やかな黒髪を振り乱し、高い声で喘ぐ。
快楽に忠実なイルカは、声を押し殺したりしない。
カカシの責めに嬉々として応え、身悶え、そして応える。
「あ・・・っ、もっと・・・」
突き上げを止めた途端、イルカの手がカカシの腹に置かれ、黒耀のような光沢を放つ瞳が強請るように見下ろしてくる。
「ホントに・・・」
その悪魔のような。いや、本物の悪魔が宿す瞳に魅入られる。
たとえイルカが、本当はカカシの事を愛してなんていないのだとしても。
それでもいいと思えるほど、カカシはイルカに溺れてしまっている。
はっはっ、と喘いでいるその胸に手を伸ばし、現れる二人を繋ぐ証を見つめながらカカシはひとつ、苦笑と呼ばれる表情をその汗の流れる顔に乗せると。
「ちょっと腰上げて・・・」
と、イルカの腰を掴んで少しだけ浮かせて。
「このまま動かないでね?」
そう言い置いて、下からこれでもかと突き上げ始めた。
「アアッ!あんッ、ゃあ・・・っ」
動かないでと言ったのに、カカシの容赦ない突き上げに浮き上がってしまうイルカの腰をがっちりと両手で固定して、カカシはその身体に自らの身を焦がす激情をぶつける。
本当に愛している。
この薄汚れてしまっているだろう魂など、今すぐにでも差し出してやりたいほど。
頭からバリバリと喰われてしまっても構わないほど愛している。
「愛してるよ・・・っ、イルカ、せんせ・・・、愛してる・・・っ」
「あンッ!ああっ、んぅ・・・っ」
ただただ、イルカを求める言葉を綴るカカシに突き上げられながら、イルカは汗の滴るその顔にふぅっと笑みを浮かべた。
(本当に馬鹿な人・・・)
こんなにも綺麗な魂を持つ人間なんてそうそういないのに。
イルカのような捕食者に惹かれてしまうなんて。
せっかくイルカが遠ざけていたというのに、最期の願いで呼び出してしまうなんて。
しかも、その強い願いがイルカなんかに愛情を求める事だなんて。
本当に愚かで可哀想な人間だと思う。
(もう手放せない)
イルカには、きらきらと月の光に輝くカカシの綺麗な銀の髪と同じく、その魂も輝いて見える。
とても美味しそうに。
そんな綺麗な魂を持つ人間に愛されるという喜びは、イルカのそれまでの生き方をも揺らがせるほどで。
今まで生きてきた永い時の中で、イルカがこんなにも執着した人間はいない。
人間はとても愚かで、そんな所が愛おしいとは思っているけれど、美味しそうな魂をすぐにでも食べられる状況にありながら、生きながらえさせてしまったのは初めてだ。
愛されていたいと思ってしまった。
イルカだけを求める、魂も、その容貌もとても美しいこの男に。
「あああッ!」
二人を繋ぐ鎖がぽぅと輝きだす。
イルカの絶頂が近いことをその紋章が教えてくれる。
「もう・・・、イきそ・・・?」
激しく突き上げてくるカカシに掠れた声で訊ねられて、イルカは何度も頷いた。
もう、すぐにでもイってしまいそうだった。
ハロウィンの日は、一段と力が強くなる。身体が一日中高揚感に包まれて、焦らされ続ける。
こんな日は、カカシの魂を喰ってしまいたくなる。
でも、喰ってしまえば、もう愛してはもらえないから。
だから、代わりにその身体を貪る。
「も・・・イく・・・っ、イくぅ・・・っ!」
そんな淫猥な台詞を口から吐き出しながら、カカシの引き締まった腹に手を置き、背中を丸めて、ぶるぶると身体を震わせ、篭っていた熱を数度に渡り放出する。
吐き出されていくイルカの熱の代わりに、その身体の中にカカシの熱い精が大量に注ぎ込まれる。その熱にも、イルカは身体をぶると震わせた。
綺麗な魂を持つカカシが吐き出す精をその身体の奥深くに取り込む時、イルカは襲ってくる痺れに抗うことなくその身体を震わせる。
それはとても甘美な痺れ。
癖になるほどの。
ずるりと身の内から楔を抜き去ったイルカは、カカシの精をその秘孔から少しだけ、とろ、と溢しながらカカシに背を向けた。
そうして、少し上体を起こしているカカシによく見えるように四つん這いになると、片手を伸ばし、引き締まったその尻の割れ目を自らの指で割り開いて、まだひくついている秘孔をカカシの目の前に晒した。
「挿れて・・・下さい。まだ欲しい・・・」
まだ喰い足りない。
その身体を代用にするのであれば、まだまだ足りないのだ。
もっともっと、カカシの精を飲まなければ、この身体は治まってはくれない。
とろりと、秘孔から白いものを溢しながらそう告げたイルカの背中に、カカシが伸し掛かる。
「愛してるって言って。言ってくれたらあげるよ?あなたの大好きなコレ」
挿れて、そして、いっぱい突いてあげる。
イルカの耳に囁くように卑猥な声でそう言って、カカシがぐぐっと先端を少しだけ押し込んでくる。そんなんじゃ全然足りない。
「愛してます」
イルカの口から自然と零れる愛の言葉。カカシ以外、誰にも言ったことのない言葉。
「ホントに?」
「愛してます。本当に愛してるから・・・っ、早・・・アアアッ!」
言っている途中で、ずぶりと突き刺された。
さっき吐き出したばかりだというのに、衰えるどころかもっと太くて硬いモノが、カカシの精でどろどろに滑っているイルカの中に。
突き刺さってきた時と同じ勢いで、ぎりぎりまで抜かれそうになったイルカが、「抜かないで・・・っ」と咽び泣く。
「抜かない、よ・・・ッ!」
カカシのその声と一緒に湿った肌のぶつかる音がする。 同時にイルカの嬌声も。
捕食者と、その餌食となる者が織り成す、乱れたハロウィンの夜は。

その後、いつまでも終わる様子を見せなかった。







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