涼夏に見る夢 後編






流れる雲間から月が覗いている。
頭上から注がれるその淡い光に照らされ、浴衣から僅かに見えるイルカの艶やかな肌は、いつも以上に輝いていた。
縁側に敷かれた二人分の座布団の上。
少し視線を滑らせれば外というこの場所が恥ずかしいのだろう。そこに横たえられたイルカの身体が僅かに震えている。
(可愛い・・・)
カカシから顔を逸らし、ぎゅっと瞳を閉じているイルカが可愛らしい。
イルカの髪紐を解きながら、ふと笑みを浮かべたカカシはその耳元に顔を寄せた。
「恥ずかしい・・・?」
囁くようにそう訊ねてみると、僅かに瞳を開けたイルカに軽く睨まれてしまう。
目元を真っ赤に染めたイルカが見せた凶悪的に可愛らしいその表情に、カカシは堪らずその唇を塞いでいた。
滑り込ませた舌で咥内を探り、探し当てたイルカの舌を蹂躙する。
「んん・・・っ、ふ・・・っ」
そうやって濃厚な愛撫を施していると、イルカの敏感な身体が熱を持ち始めた。その上に伸し掛かるカカシの鼻をイルカの芳しい体臭が擽る。
カカシの劣情を毎回これでもかと煽る芳醇な香りだ。
誰かに見られるかもしれないと、不安になっているだろうイルカの片手をきつく握る。
そうしてカカシは、イルカのしっかりと合わされている浴衣を、もう片方の手で崩し始めた。
襟元に手を差し入れ、大きく肌蹴ていく。
しっとりと汗ばみ、掌に吸い付くイルカの肌が堪らない。
期待していたのか、ツンと尖った乳首に辿り着くと、カカシはそれをその指先で器用に弄り始めた。
「んゃ・・・っ、あっ、あ・・・っ」
そうしながら口付けを解き、びくびくと震えるイルカの身体に吸い付いていく。
忍服で隠れない首筋には痕を残さない。イルカが困る事はしない。
その代わり、見えない鎖骨から胸元にかけてたっぷりと、カカシが愛したという証拠を残す。
触ってあげていないもう片方の乳首を、尖らせた舌先でちろちろと舐める。
感じやすい乳首を苛められて、イルカの雄が勃ち始めたのだろう。カカシの視界の隅でイルカの膝がゆっくりと上がり、僅かに擦り合わせられる様を捉えながらそれを口に含むと、上からくぐもった声が聞こえてきた。
見なくても分かる。
殆ど外と言っていい場所だ。イルカは声を出すまいと唇を噛んでいるか、空いている手の甲を口元に押し当てているのだろう。
甘噛みしていた乳首を少しだけ解放する。
「手で押さえてもいいけど、唇を噛むのはダメですよ?切れちゃうから」
胸元から顔を上げずに小さくそう告げ、カカシは再びそれを口に含み舌で転がした。
しきりに擦り合わされているイルカの膝頭に手を伸ばし、僅かに乱れた浴衣の裾からその手を侵入させ、際どい所までたくし上げる。
(すごいな・・・)
そこに隠されていたイルカの熱は、既にしっとりと濡れ、触れるカカシの手を押し返す程に高ぶっていた。舌で弄んでいた乳首を解放する。
「もしかして、凄く興奮してる・・・?」
そう訊ねながら身体を起こしてみると、口元を片手で押さえたイルカの涙の滲む漆黒の瞳がカカシを見上げてきた。
「恥ずかし・・・く、て・・・」
月明かりの下、下肢を肌蹴させられて恥ずかしくて堪らないのだろう。荒くなっている息の下、小さな声でそう言いながらカカシから視線を逸らすイルカにふと苦笑する。
「だいじょうぶ」
イルカの頬に手を添え、そっと口付ける。
「・・・恥ずかしいって分からなくなるくらい、いっぱい愛してあげる」
「んぁッ!んん・・・っ」
低く囁くようにそう告げ、カカシはイルカの熱欲への愛撫を開始した。ぎゅっと瞳を閉じたイルカの手が、甲高い嬌声を上げる口元を慌てて押さえる。
そんなイルカを熱い眼差しで見つめながら、カカシは手の中で育ち切っているイルカの先端から溢れる蜜を指先で掬った。その蜜を全体に塗りつけるように扱きあげていく。
敏感なイルカが次から次へと零す蜜のお陰で、徐々に動きが滑らかになってくる。くちゅくちゅと卑猥な水音をたてて扱き上げていると、達きそうなのだろう。口元を押さえていたイルカの手が伸び、カカシの手を阻んできた。
「や・・・っ、出ちゃ・・・」
「いいよ」
「でも・・・っ、俺だけ、ゃ・・・っ」
縋るようにカカシを見つめ、そんな可愛らしい事を言うイルカに、ふと笑みが浮かぶ。
「オレはあとで」
そう言いながら、カカシはイルカの真っ赤に染まる耳元に顔を寄せた。
「イルカ先生の中にいっぱい出したいから」
「・・・ッ!」
息を吹き込むように小さな声でそう告げると、ひゅっと息を詰めたイルカの身体がビクンと大きく震えた。急いで戻ってきたイルカの手が、嬌声を上げようと開かれたその口元をしっかりと押さえる。
「ンッ、ンン・・・ッ!」
ぎゅっと瞳を閉じたイルカの身体がビクビクと痙攣し、その口元からくぐもった声が上がると同時に、カカシの手を温かな精が濡らした。
上がるだろうと思われた声を見事抑えて見せたイルカにふと小さく苦笑する。
(まだ足りない、か・・・)
そんなイルカを快楽の海へと完全に堕とすべく、カカシは濡れたその手を奥へと忍ばせた。
「ん・・・っ」
期待にひくつく蕾を探り、つぷりと指を咥え込ませる。
慣れたイルカの秘孔はすぐに緩み、二本に増やした指でも物足りなくなって来たのだろう。口元を押さえている手の隙間から、あれ程抑えていたイルカの声がもっとと強請るように上がり始めた。
「欲しい・・・?」
快楽に染まったイルカの瞳を覗き込みながらそう訊ねる。すると、口元を押さえていたイルカの手が完全に外れ、その口から嬌声と共に強請る言葉が出てきた。
「んあぁっ!ほし・・・っ。カカシさん・・・っ、もぅ、欲しい・・・っ!」
縋るように伸ばされた手と甘く強請るその声に、堪らず指を引き抜く。
そうしてカカシは、イルカの両脚を抱え上げ、それを大きく割り拡げた。浴衣が崩れ、イルカの肌が露出する。
淡い月明かりの下、卑猥に濡れるイルカの恥部が眼前に晒され、それを見た瞬間。
カカシは我を忘れた。





雲が晴れた漆黒の空を見上げる。
そこにある傾いた月と、数え切れないほどに散りばめられた星々を見つめながら、カカシはふとその目元を緩めていた。
いつか。
何年後になるかは分からないが、いつか。
無事、忍を引退する事が出来たあかつきには、ここで暮らしたい。
情緒あるこの家のこの縁側で、こうして外を眺めながらのんびりとお茶を飲む余生を送りたい。
出来ればその時。
愛しいイルカが、笑って隣に居てくれたらいい。
空を見上げながらそんな事を夢見るカカシの口元に、ふと小さく苦笑が浮かぶ。
イルカにそれを告げたら、何年も先の事をと笑われるだろうか。
(いや・・・)
自らの膝の上にゆっくりと視線を落としたカカシは、この家に置いてあった浴衣に着替えさせられ、すやすやと心地良さそうに眠るイルカを見つめながら、ふと小さく笑みを浮かべていた。
月明かりに照らされて輝くイルカの黒髪をそっと撫でるカカシの瞳が、愛しさから切なく眇められる。
イルカはきっと、嬉しそうに笑ってくれるのだろう。
今にも泣き出しそうな顔をして、それでも精一杯の笑みを見せてくれる。
そうして約束してくれるのだ。
―――ずっと一緒です。
と。