新妻イルカ観察日記 5
嫉妬は甘い媚薬 後編






ベッド上に降ろしたイルカの身体が小さく震えている。
口が堅いイルカを吐かせるという名目の下、卑怯なカカシの手によってギリギリまで追い込まれていたのだ。もう自分では制御出来ない所まで来ているのだろう。
「・・・カシ、さま・・・っ」
ベッドに片膝を付くカカシの見下ろす視線の先。漆黒の瞳を潤ませるイルカから助けを求めるように名を呼ばれ、ベストを脱ぎながら手甲を咥え取るカカシは、ふと小さく苦笑する。
「・・・分かってる」
アンダーすらも脱ぎ去り、囁くようにそう言いながら体勢を低くするカカシは、僅かに震えるイルカの頬に手を伸ばした。形良いイルカの顎に親指を添えると、待ち切れないのだろう。早く口付けて欲しいと言うように開かれる唇が愛おしい。
「ほら、舌出して」
「ぁ・・・ん・・・っ、んふ・・・っ」
囁くように告げたカカシのその言葉に操られるかのように、素直に差し出されたイルカの緋色の舌。それを絡め取るカカシは、イルカの甘い口腔内をたっぷりと弄る間、イルカが身に纏う忍服を次々に剥ぎ取っていく。
額当て、髪紐、それからベスト。続いて、カカシの舌先をんくんくと懸命に吸うイルカのアンダーを引き上げ、胸元まで大きく捲る。
すると、それまで口付けに夢中になっていたはずのイルカが何故か、むずかるようにカカシの口付けから逃れた。
「・・・イヤ?」
胸の飾りを弄られるのは嫌いでは無いはずだ。
拒絶された理由が分からず、イルカの潤んだ漆黒の瞳を覗き込むカカシが小さくそう訊ねてみると、むぅと唇を尖らせるイルカから恨みがましい眼差しを向けられた。
「・・・責任、取るって・・・っ」
どうやら弄って欲しいのは胸の飾りでは無かったらしい。
羞恥に顔を染めながらも、僅かに息を乱して責任を取れと言うイルカが堪らなく可愛らしい。今にも泣き出しそうな顔と声でそう告げられたカカシから、ふと小さく笑みが零れ落ちる。
カカシのその笑みを、笑われたと悪い方向に捉えてしまったのだろう。途端、きゅっと悲しそうに顰められるイルカの眉。
「あぁ、違いますよ」
それに気付いたカカシは笑みを苦笑に替え、涙が浮かぶイルカの目尻にそっと口付けを落とす。
「イルカ先生からおねだりして貰えて、凄く嬉しかったんです」
カカシの言葉が本当かどうか確かめているのか、おずおずと見上げてくるイルカが堪らなく可愛らしい。
「・・・手と口、どっちがイイ?」
イルカを見下ろす深蒼の瞳に可能な限り愛しさを込め、小さく首を傾げるカカシがそう訊ねてみると、訊ねられた主旨が良く分からなかったのだろう。
「・・・え・・・?」
きょとんとした顔で見上げられた。そのあまりにも可愛らしい反応に苦笑を深めたカカシは、イルカの下肢へと手を伸ばす。
「・・・ココ」
「ん・・・っ」
自分が与える愛撫に反応し、大きく猛り育っているイルカの分身が愛おしい。
忍服の上からそっと触れるカカシは、布越しにでも触れられて感じたのだろう。ビクンと小さく身体を震わせるイルカの唇に一つ口付けを落とす。
「今日はホワイトデーでしょ?お返しに、イルカ先生の望むとおりにしてあげますよ」
お返しだけではない。先ほど勘違いして苛めてしまったお詫びの意味もある。
イルカの望むとおりにとは言ったが、出来れば手ではなく口でしてあげたい。
手淫は毎回しているが、手よりも気持ち良いはずの口淫は、恥ずかしくて居た堪れないのだろう。結婚してだいぶ経つというのに、数える程しかさせて貰っていないからだ。
「・・・どっちがイイ?」
そう問い掛けていながら、カカシはイルカの応えを待たなかった。ちゅっちゅっとイルカの身体に軽い口付けを落としながら、徐々に下へ下へと移動していく。
かなり焦らされた後だ。羞恥心よりも期待感の方が勝っているのか、そんなカカシを視線で追うイルカの眼差しが熱い。
イルカの綺麗に鍛えられた腹に口付けながらズボンの前を寛げるも、イルカの口から駄目だという制止の言葉が発せられる事は無かった。それどころか、下着ごとズボンを引き下げようとすると、躊躇いがちに腰を上げて協力してくれるイルカが愛おしい。
あまり見ていると恥ずかしいだろうと、ズボンの中から顔を出した先端にさっそく口付ける。
「んぁ・・・ふ・・・っ」
すると、期待にだろう。身体を小さく震わせるイルカが甘い吐息を零した。それを耳に心地良く感じながら、カカシはイルカの熱い熱欲を喉奥へと迎え入れる。
「ああ・・・ッ!」
先端から次から次へと溢れ出す甘い蜜を啜り、血管が浮き上がるイルカの欲望を唇で扱き上げながら、カカシは戦慄くイルカの足からズボンを剥ぎ取った。そのまま足を抱え上げたカカシは、背後に置いておいた自らのポーチを探り、その中から潤滑液が入った小瓶を取り出す。
口淫しながら、自分を受け入れてもらう準備もする為だ。
「ぁ・・・ッア、ぁん・・・っ」
ようやく与えられた確かな快楽に夢中になっているのだろう。震える手でカカシの髪を掴み締め身悶えるイルカが、心地良さそうな嬌声を上げている。
良い反応を見せるイルカに深蒼の瞳をふと和らげ、片手で器用に開けた小瓶から潤滑液を手に取ったカカシは、奥で息づくイルカの秘所へそっと指先を伸ばす。
「ひぁ・・・ッ」
暦の上では春だが、まだまだ寒い日が続いている。
掌で温めたつもりだったが、まだ冷たかったのだろう。秘所に潤滑液を塗られたイルカの身体が大きく跳ね上がる。
続けても大丈夫だろうか。
視線を上げるカカシがイルカの様子を窺うと、涙目で見下ろして来るイルカの漆黒の瞳と視線がぶつかった。だが、恥ずかしいのだろう。すぐに視線を逸らされてしまう。
制止されなかったという事は続けて良いのだろうと勝手に解釈して、カカシは濡れた指先を埋めて行く。
「んん・・・ッ」
突如侵入して来た異物を拒むように収縮した内壁が、根元まで埋めたカカシの指をきつく締め付けて来ている。
だが、イルカの身体が拒むのは最初だけだ。内壁を掻くように少し擦っただけですぐに華開き、とろとろに柔らかく解れて行く。
あれだけ焦れていたのだ。すぐに遂情するのではと思われたイルカだが、我慢しているのだろうか。二本に増やした指先で快楽点を擦るも、口に含むイルカの熱欲が爆ぜる事は無かった。
「・・・カカ、さま・・・っ、ま・・・って・・・っ」
嬌声の合間、力無い手で髪を引くイルカから辛そうな声で待って欲しいと請われ、カカシは一旦全ての愛撫の手を止める。
我慢する必要など無い。
顔を上げ、達して良いと告げようとしたカカシは、だが、物欲しそうに揺れるイルカの漆黒の瞳を見止め、その言葉を喉奥へと飲み込んでいた。
「・・・挿れて欲しいの?」
代わりにそう訊ねてみると、小さくはあったが、こくんと素直に頷くイルカが壮絶に可愛らしい。イルカの秘孔に埋め込んでいた指をゆっくりと引き抜き、カカシは自らの中心で痛い程に猛っていた愚息を取り出す。
「ゆっくり息吐いてて」
そうして、切っ先をイルカの蕾へと押し当てたカカシは、早くと言うように伸ばされるイルカの両腕に堪らず、その最奥をグンと一気に穿つ。
「・・・ッ、アアア・・・ッ!」
ギリギリまで我慢していたのだろう。挿入と同時にイルカが精を迸らせる。
それを視界の端に捉えるカカシはその後、イルカが満足して眠りに堕ちるまで、お返しという名の愛撫を与え続けた。