繋いだこの手を離さない 番外編 後編






赤く色付くイルカの秘所が、くちゅくちゅと卑猥な水音を立てている。
潤滑剤を使っているからだろうか。少し中を拡げるように指を動かされても痛みは全く無く、それどころか、ヌルヌルとした感触がイルカの興奮を煽っている。
「あ・・・っ、んぁ・・・っ」
内部の快楽点を強過ぎない力加減で刺激され、開いたままのイルカの口から絶えず嬌声が零れ落ちる。
一度は吐き出したはずの熱欲も、全く触れられていないというのに大きく頭をもたげ、その先端からはしきりに蜜が溢れ出していた。
双玉から秘所までの間を親指の腹で撫で回され、中と外、両方から快楽点を挟み込むように刺激されたイルカは、息も絶え絶えに喘ぐ。
「・・・カシ、さま・・・っ」
名を呼ぶ事で限界を訴えると、胸の突起を甘噛みしていたカカシから、「またイっちゃいそう?」と訊ねられた。こくこくと頷くイルカの秘所からゆっくりとカカシの指が引き抜かれ、繋がれていたカカシの手も離れていく。
そうして、イルカの立てた膝裏にカカシの手が掛けられた次の瞬間。
(え・・・?)
力が抜けていたイルカの身体は、コロンと簡単に裏返されていた。疼く腰に手が掛かり、潤滑液で濡れるイルカの臀部がぐいと高く引き起こされる。
「や・・・っ」
あまりにも恥ずかしい体勢だ。これでは、カカシの目の前に全てを曝け出す事になる。
カカシを欲しがってひくつく秘所も、足の間で揺れる熱欲の先端から雫が零れる様までも克明に見られてしまう。
「いや・・・ですっ、カカシさま・・・っ」
目の前にある枕を引き寄せ逃げようとするも、腰を捕われていては逃げられず、いやいやと首を振りながら背後に居るカカシを振り返ると、限界なのはカカシも同じなのだろうか。辛そうに眉を顰めるカカシの深蒼の瞳と視線がぶつかった。
「ゴメンね。恥ずかしいだろうけど、コレが一番負担が少ないだろうから」
その言葉と同時にイルカの双丘が割られ、滑る秘所に熱いものが押し当てられる。狙いを定めるかのように熱が動き、くぷと先端を僅かに食まされたイルカは、襲われるだろう衝撃に備え、枕を握る手に力を込めた。
「・・・息、吐いてて」
「んぁ・・・ッ!」
そうしてゆっくりと開始された挿入は、たっぷりと使われた潤滑液のお陰だろうか。まだたったの二度目だというのに、カカシを受け入れるイルカに驚く程に痛みを感じさせなかった。
むず痒ささえ感じる程に柔らかく解されていた秘所をカカシの硬い雄が擦り、それが堪らない刺激となってイルカの官能を煽る。
(どうしよう・・・っ、俺・・・っ)
殆ど初めてに近いというのに、秘所を穿たれてこんなにも感じてしまう自分が怖い。
きつく握り締めている枕に顔を埋め、イルカは今にもはしたない声が出そうになっている自らの口元を押さえる。
「・・・痛い?」
そうやって痛みを堪えていると思われたのだろう。カカシの僅かに掠れた声が聞こえると共に、戦慄く腰を撫でられ、詰めそうになる息を懸命に吐き出すイルカはふるふると首を振る。
痛みは全く感じていない。それどころか、どうにかなってしまいそうな程に気持ち良い。
「ゴメンね。あと少し、だから・・・っ」
だが、イルカの否定はカカシに対する気遣いと捉えられたらしい。ゆっくりと行われていた挿入が更に速度を落とし、もどかしさに襲われるイルカは違うと首を振る。
イルカの身体を気遣い、高めようとしてくれているカカシの想いは凄く嬉しいが、イルカだけが気持ち良いなんて駄目だ。カカシにも気持ち良くなって欲しい。
だが、経験値で劣るイルカがカカシを気持ち良くさせる事なんて―――。
「・・・挿・・・った」
全てが収められたのだろう。快楽に震えるイルカの背にカカシの胸元が当たり、枕を握り締めていたイルカの手の上からカカシの指先が絡められる。
「・・・大丈夫?イルカ先生」
「んぁ・・・っ」
耳のすぐ後ろで低く囁かれた自分の名。それを聞いたイルカの身体がぶるりと震え、堪え切れない嬌声が上がる。
「イルカ先生?」
「ぁん・・・っ、だ、め・・・っ」
声が抑えられない。カカシに名を呼ばれるたび、身の内から劣情が次々と湧き上がる。
膨れ上がる悦楽が押し殺していた嬌声をイルカの口から押し出し、カカシを咥え込む秘孔も続きを強請るようにきゅうきゅうと収縮する。
「ア、あ・・・っ、カカ・・・さま・・・っ」
カカシを気持ち良くさせる事など出来ないだろうと思っていたが、声に煽られるのは経験値の高いカカシも同じだったらしい。
「・・・っ」
イルカがカカシの名を呼んだ途端、咥え込んでいるカカシの雄がぐんと容量を増した。小さく息を呑んだカカシが、そのままゆっくりと抽挿を開始する。
「っふ・・・っ、んぅ・・・っ」
内部にあるイルカの快楽点の場所を、カカシはイルカ以上に良く知っている。張り詰めた先端が当たるように動かされ、痺れるような快楽に襲われるイルカは、埋めていた枕から顔を上げ、カカシを煽ると知った声を解放する。
「そ、こ・・・っ、ン・・・ッ、だめ・・・っ、だ、め・・・っ」
「・・・っ、イルカ先生・・・っ」
イルカの口から零れる『駄目』は『悦い』と同義だ。
首を振って快楽を逃しながら感じ入った声を素直に上げると、カカシも気持ち良くなってくれているのだろうか。息を詰めたカカシが、イルカの秘所を穿つその動きを徐々に激しくさせていく。
「・・・カシ、さま・・・っ」
もっと気持ち良くなって欲しい。カカシと一緒に昇り詰めて行きたい。
うなじに降り掛かるカカシの荒い息を嬉しく思いながら、イルカは、カカシが生み出す快楽の海へ素直に溺れていった。





ベッドで眠るイルカの額にそっと掌が置かれる。
「・・・ん・・・」
ひんやりと冷たいその手で目を覚ましたイルカの視界に映ったのは、暗部としての任務に就くのだろう。懐かしい暗部服を身に纏ったカカシの姿だった。
「起こしちゃってゴメンね」
「い、いえ・・・っ」
いつの間に眠ってしまったのだろうか。
ベッド端に腰掛けるカカシから小さくそう謝られ、ふるふると首を振るイルカは慌てて起き上がる。
カカシが出掛けるのであれば、イルカも共に出なければ。主の居ない部屋には居られないだろう。
だが、ベッドから降りようとしたイルカの身体は、ふと小さく苦笑したカカシの手によって、ベッドの上に押し留められてしまった。
「熱は出てないみたいだけど、身体が辛いでしょ?夜明けまでもう少し時間がありますし、まだ眠ってて良いですよ」
「でも・・・」
躊躇うイルカの手を取ったカカシが、その掌に小さな鍵を乗せる。
「・・・これって・・・」
「ココの合鍵です」
自らの掌に視線を落としていたイルカの漆黒の瞳が驚きに見開かれる。
合鍵を貰えるなんて思っていなかった。
上忍で、まだ暗部としての任務に就く事もあるカカシから、この部屋の合鍵を渡される意味合いはとても大きい。
(どうしよう・・・)
嬉しい。凄く嬉しい。
今更ながらに、カカシの伴侶になったのだという実感が沸き、手の中の小さな鍵を見つめるイルカの瞳にじわりじわりと涙が滲む。
「明日の夜までには戻る予定ですから。新居の話もしたいですし、仕事が終わったらココで待っててくれる?部屋の物も自由に使って構いませんから」
イルカの髪をそっと撫でるカカシから柔らかな笑みと共にそう告げられ、イルカは目に滲んだ嬉し涙を拭いながら「はい」と頷く。
「・・・ご武運を」
カカシの深蒼の瞳を真っ直ぐに見つめるイルカは、カカシの無事の帰還を祈りながら小さく笑みを浮かべてそう告げる。
すると、「ん」と嬉しそうな笑みを浮かべて見せてくれたカカシが、腰掛けていたベッドから立ち上がった。見上げるイルカの額にそっと口付けを落とす。
「行って来ます」
愛おしそうに深蒼の瞳を細め、イルカの頬をひと撫でしたカカシが部屋を後にする姿を見送り、一人ベッドに残されたイルカは貰ったばかりの小さな鍵を目の前に掲げる。
(嬉しい・・・)
合鍵を預けてくれたカカシの信頼が嬉しい。そして、一緒に暮らそうと言ってくれて凄く嬉しい。
口元に小さく笑みを浮かべながらゆっくりとベッドに倒れ込んだイルカは、たっぷりと愛されて疲れていたのだろう。掌の中にある小さな鍵を眺めながら、いつしか幸せな眠りの淵へと再び堕ちて行った。