優しく 中編






カカシに「ベッドはどこ?」と手を取られ、手を繋いで寝室へと案内した。
いつも寝ているベッドが、今日はなんだか違って見える。
「あ・・・」
寝室へやってきたはいいが、視界に入ったベッドに生々しいものを想像してしまい、どうしていいか分からずに立ち尽くす。そんなイルカを励ますように、カカシが繋いだ手をぎゅっと強く握ってくれた。
「座って?」
手を引かれて、ベッドへと座らされる。
横にカカシも座るとキシとベッドが軋み、イルカはその小さな音にびくりと体を震わせた。
「・・・怖い?」
聞かれてふるふると首を横に振った。
本当は、少し怖い。男同士でどうやるのか知ってはいるが、したこともされたこともない。
「あの・・・、俺初めてで・・・」
「伽も?」
任務でもそういう事は無かったから、こくんと頷いた。
「嬉しい」
カカシが、本当に嬉しそうに笑みを浮かべた。今日初めて見る笑顔に、イルカの体から少し力が抜ける。
「じゃあ、優しくしないと、ね・・・?」
囁くように言われたその言葉と共に、少し俯くイルカの頬にカカシの体温の低い右手が添えられ、カカシへと向けさせられた。近づいてくる端正な顔を見ていられずに、ぎゅっと目を閉じる。
「ん・・・」
緊張で硬く閉じている唇に、柔らかいものが触れた。ちゅっと小さな音を立てて一度離れたそれが、今度はしっとりと重なってきて遠慮がちにするりと舌が滑り込んでくる。
「んん・・・っ」
奥で縮こまっていたイルカの舌を探り当てると、宥めるように軽く吸い上げてきた。優しいキスに思考がとろとろに溶けてくる。
頬に添えられていた手がそっと首の後ろへ回されて、結わえていた髪紐を解かれた。ぱらと前に下りてきた髪をそっと耳へ掛けてくれたが、その刺激にもイルカはぴくんと微かに反応してしまった。
「ん・・・っ・・・ん、ふっ・・・」
その間も、奥歯からゆっくりと歯列を舐められたり、上顎を擽られたり、再び舌を緩く合わせてきたり。激しさのない分、じっくりと味わうようにキスされて、体がだんだんと火照ってくるのが分かる。
(優しいけど、こっちの方が恥ずかしい気が・・・っ)
理性が残っている分、されている事がいちいち分かってかなり恥ずかしい。
ゆっくりと絡めあっていた舌が解かれ、ちゅっと音をさせて唇が離れる。
至近距離で見つめてくるカカシの瞳に、顔を真っ赤にして潤んだ目をした自分を見つけてイルカは羞恥に顔を背けた。
「こっちを向いて」
優しい声でカカシが言うが、こんな恥ずかしい顔見せられるはずもない。頑なに壁に向いていると、ふっと笑われた。
「いいですよ、そのままでも。まずは、ここから・・・」
その言葉と共に、耳元の髪をかき上げられて耳朶を舌で掬われ、甘く噛まれた。
「あ・・・っ」
耳のすぐ近くでカカシの息遣いが聞こえる。その音に、ぴちゃりという音が加わった。舌がゆっくりと耳の形に沿って這う。
「ん・・・っ」
中まで侵入されて、擽ったさとたくさんの羞恥と、少しどころじゃない快楽にイルカは首を竦めた。
耳を舐めていた舌が、つつと首筋へと移動する。
そこでふとカカシが動きを止めた。絶え間なく与えられていた刺激が止んだ事に、イルカは気づかぬうちに力が入っていた体をふぅっと緩めた。
「ここは付けない方がいいか・・・」
「え・・・?」
誰に言うともなく呟かれた言葉にその意味を考えていると、浴衣の襟をぐいと引かれて肩まで顕にされた。
「・・・っ」
慌てて浴衣を掴み晒された肩を隠そうとするのをカカシが止める。そのまま鎖骨へと顔を近づけ口付ける。ちりと微かな痛みのあと、ぺろりと舐められた。
顔を上げ、満足そうに鎖骨のあたりを見ているカカシに、「何を・・・」とイルカは尋ねた。
「マーキング」
ぺろりと唇を舐めて卑猥に笑うカカシに、イルカは真っ赤になってしまった。
「本当は、ココ・・・」
言いながら耳の後ろから首筋にかけて、つと指で撫でる。
「ココに付けたかったけど、嫌でしょ?」
どう考えても忍服で隠れない位置だったから、コクコクと頷いた。
「オレとしては見える位置に付けたかったけど・・・」
「それは・・・っ」
本心だろうそれに、イルカはされるのではと慌てた。だが、カカシは「しませんよ」と笑った。
「こんなところに付けたら髪を下ろして隠しちゃいそうだなぁと思って」
イルカの髪を一房とって口付ける。
「こんな扇情的なイルカ先生は、誰にも見せたくないから」
我慢します、と言ってカカシは動きを再開した。

「あ・・・っ、んぅ・・・ふぁ・・・っ」
ぴちゃぴちゃという音とイルカの嬌声が響き渡る。
胸の突起を痛みを感じるようになるまで散々弄られたあと、カカシはイルカの足元に蹲り昂り始めていたモノを口に含んだ。
上忍のカカシにそんな事はさせられない、やめて欲しいと何度も言ったが、カカシは聞く耳を持たなかった。
「や・・・あっ、も・・・っだめ・・・!」
限界が近い。このままではカカシの口の中に出してしまうと思ったイルカは、力の入らない手でカカシを押し退けようとした。
だが、カカシに追い上げるように吸い上げられ、敏感な筋に舌を這わされて意識が飛んだ。
「ッあああっ!」
体からくたりと力が抜け、はあはあと荒い息をついてると、ごくりという音が耳に届いた。ハッとしてカカシを見遣ると、顎に零れた白いものを親指で拭いぺろりと舐め取っているところだった。
(もしかして・・・っ、もしかしなくても・・・!)
「飲んだんですか・・・?」
違うと言って欲しいと願ったが、カカシはニッコリと笑みを浮かべてうんと頷いた。
「イルカ先生のは甘くて美味しいね」
その台詞にイルカは再びふぅっと意識が遠退きかけた。
なんて事をするのだろう。口にした事はないが、あんなもの美味しいわけが無い。
「止めて下さいって言ったのに・・・っ」
申し訳なさに涙が滲む。そんなイルカの目じりにちゅっと口付けると、カカシは「止めないよ」と囁いた。
「上忍のオレは今ここにはいないから」
今のオレはあなたの恋人でしょ?そう言ったカカシに、イルカは真っ赤になってううと呻いた。
カカシの言いたい事が何となく分かって、それ以上何も言う事が出来なくなってしまう。
(俺だって・・・)
イルカだって、カカシに気持ち良くなって欲しい。カカシが上忍だからという理由ではなく、恋人だから奉仕したい。
した事はないが、さっきしてもらった事と同じ事をすれば・・・。
そう思ったイルカは、宥めるように背を撫でてくれているカカシに声をかけた。
「あの・・・っ」
「ん?」
「俺も・・・!俺も、したい・・・です・・・」
羞恥に声がだんだん小さくなってしまう。
でも、してもらったのだからさせて欲しいとカカシの瞳をしっかり見つめて訴えた。
「あー・・・、それはまた今度、でいいですか?」
見つめるイルカの視線を避けるようにカカシが横を向く。その言葉に、イルカは落ち込んだ。
「俺にされるのはイヤ、ですか・・・?」
「そうじゃないんです!その・・・ね・・・?」
俯くイルカに慌てたカカシが、その手を取った。そのまま自分の下半身へと導き、触らせる。
「・・・っ」
触らせられた部分が熱く滾っている事に気づいたイルカは、顔を真っ赤に染めた。
「今、あなたにされたら優しくできそうにないんです。だから、本当に魅力的な申し出なんですけど、それはまた今度」
ね?と言って笑ったカカシに何と言っていいか分からず、イルカはただ小さく頷いた。