二人羽織り 中編






その話はそれで仕舞いにしようとカカシは思っていたのに。
二人の話を聞いているうちに、二人羽織りをしようと言い出したのはイルカの方からだったと知り、これはお仕置きが必要だなとカカシは内心溜息を吐いた。
二人羽織りは笑いを取る宴会芸の一つだが、あれがどれだけ危険かイルカは分かっていない。
特に、イルカが前だなんて言語道断だ。
「イルカ先生、洗い物が終わったのならちょっとこっちにおいで」
家に帰って風呂と夕飯を済ませた後、カカシはその事をたっぷりと教えようと、台所での洗い物が終わったらしいイルカを呼んだ。
「何ですか?」
捲っていた浴衣の袖を戻しながら、イルカが台所から戻ってくる。
イルカの問いには答えず、笑みを浮かべて片手を差し出すと、イルカはカカシの言わんとする所が分かったのか、恥ずかしそうにしながらも、カカシの手にその手を載せてくれた。
水を使っていた事で冷たくなってしまっている手をゆっくりと引き寄せ、イルカを胡坐をかいた自らの足の間にカカシと同じ向きに座らせると、カカシはその背中をしっかりと抱き込んだ。
手は冷たかったが、相変わらず暖かいイルカの体温を感じながら、小さく溜息を吐く。
(あったかい・・・)
今日は胸が抉られるような光景を見てしまっていたからか、いつも以上にイルカの体温が暖かく感じた。
冷たいイルカの手を擦って温めながら、しばらくそうしていると。
少し俯いてカカシの手を眺めていたらしいイルカが、小さく声を掛けてきた。
「これ・・・、どうしたんですか・・・?」
そう言いながらカカシの手を取ったイルカが、その指先でカカシの掌をそっと撫でる。そこには、赤い跡が横並びに転々と存在していた。
手甲越しでも、これほどの跡が残った。
あの時の自分のうろたえ具合が分かるようだなと、カカシはふと苦笑した。
「あぁ・・・、今日、ね。・・・ほら、あの時」
苦笑しながらそう告げると、それで分かったのかイルカが、
「・・・ごめんなさい」
と小さな声で謝ってきた。
「・・・ううん。・・・オレの方こそ、あなたを少し疑ってしまいました・・・。ゴメンね・・・?」
カカシも小さな声でそう謝ると、それを聞いたイルカは、慌てたようにふるふると首を振った。
「あれは・・・っ、勘違いされるような事をしていた俺が悪かったんですし・・・」
言いながら少し俯いたイルカの黒髪が揺れ、そこから、日に焼けた綺麗なうなじが覗く。
(お仕置きしようと思ってたけど・・・)
滅多に無いいざこざで、互いに落ち込んでしまっているこの状況で、今のイルカをお仕置きするのは可哀想かと思う。
代わりに、と言っては何だが。
凄く愛したい。
落ち込んでいるイルカを、とろとろになるまで愛して慰めたい。
そして、イルカに愛されている事を確かめたい。
一度、イルカを失うのかもしれないと恐怖に覆われた心は、そう簡単には治りそうに無くて。
じくじくと未だに痛んでいるこの心を治すには、イルカとの営みが必要だと思った。
「・・・ねぇ、イルカ先生」
イルカの身体を抱き込み、その頬をイルカのうなじへと寄せる。
「オレと、二人羽織りしませんか?」
「え・・・?」
「やりたかったんでしょ?二人羽織り。だから、オレと二人羽織りしよ・・・?」
囁くようにそう言いながら、カカシはイルカの黒髪で少し隠れた耳にふぅっと息を吹きかけた。
途端に、「んっ」と息を詰めるイルカが愛らしい。
二人羽織りにかこつけて夜の誘いを掛けるカカシに、イルカはとても恥ずかしそうに身動ぎしている。
「・・・ね?」
再度、強請るように甘い声で誘うと、イルカは小さな声で、
「・・・はい・・・」
と、了承してくれた。
「ありがと」と囁きながらイルカの身体を抱き上げ、寝室へと足を向ける。
ベッドの上にイルカを座らせてその背中を再び抱き込むと、カカシの視界に映るイルカのうなじが、真っ赤に染まっていて。
それに気付いたカカシはふと笑みを浮かべ、その手をゆっくりと、イルカの胸元へと向かわせた。
殊更ゆっくりなのは、俯いているイルカの視線を意識しての事だ。カカシの手がどこへ向かうのか、イルカはきっとドキドキしながらそれを見ている。
イルカの背後にいるカカシには、イルカの胸元は見えない。
だから、浴衣の合わせ目を探るため、カカシは指先に触れた浴衣の生地をツツとなぞった。
「ん・・・っ」
繋ぎ目のない生地の上で指を滑らせると、感じやすいイルカがぴくんと反応を返す。
(このあたりなんだけど・・・)
まずは、浴衣の上からイルカが好きな突起を可愛がってあげようと指先で探るのだが、見えないからかなかなか見つからなくて。
「イルカ先生、あなたの好きな場所がどこにあるか教えて・・・?オレの所からじゃ見えないから」
「え・・・っ?」
教えてくれというカカシに、イルカは驚いた声を上げた。
「二人羽織り、するんでしょ?オレは見えないんだから、イルカ先生がオレに教えてくれなきゃ」
「でも・・・っ」
恥ずかしいのだろう。躊躇するイルカの身体を強く抱き寄せる。
「・・・教えて?イルカ先生の好きな所・・・」
囁きながら、カカシはイルカの黒髪の隙間から覗いている綺麗なうなじへと舌を這わせた。ちゅぷと音をさせて唇で軽く食むと、イルカの身体が震える。
(かわいい・・・)
恥ずかしい、恥ずかしいとイルカの真っ赤になったうなじが言っている。
「教えてくれないと、ココしか可愛がってあげられないよ・・・?」
舌先で舐めながら、イルカの黒髪をかき分ける。
首の中央で少し盛り上がっている部分を唇で咥え、舌全体で弄ると、イルカから「ぁ、ん・・・っ」という甘い吐息が聞こえてきた。
邪魔な浴衣の襟を歯で噛み、少し引き下ろす。
すると、イルカの手が、その胸元に手を置いているカカシの腕に縋るように掛かった。
「カカシさん・・・っ、もう・・・っ」
「・・・なぁに?ほら、早く教えてくれないと・・・。それとも、ココだけでいいの?」
襟を少し寛げた事で増えた肌にちゅっちゅっと口付けながら、カカシはそう囁いた。
イルカが首を振る。
それは、教えるなんて出来ないという事かと思いきや。
「・・・も・・・すこし・・・上、です・・・」
カカシの耳にイルカの、震える小さな声が聞こえてきた。
その身体を震わせてしまうほどに恥ずかしいのだろうに、それでも、カカシに触れて欲しい場所を教えてくれるイルカが。そうして、そこだけじゃ嫌だと言うイルカが愛しい。
「こう・・・?」
カカシはふと笑みを浮かべると、イルカの言葉に従って指先を少し上へと滑らせた。
布越しでも分かるくらい、ぷくりと勃ってしまっている突起。
「あっ、やぅ・・・ッ!」
指先でそれを見つけたカカシは、すぐにそれを布ごと摘み上げた。