重なる心と身体 3






イルカの身体にカカシが触れるのは初めてではない。
病院で気持ちを確かめ合った時に触れ、退院した後にも我慢が出来ずに触れた。
その後も数度、カカシが我慢できなくなった時に触れさせてもらい、そして、イルカにも触れてもらった。
だが、これまでは触れ合っていただけで、カカシがイルカと繋がるのは今日が初めてだ。
男を受け入れるのは初めてだからと、少しだけ怖がっていたイルカを、出来るだけ優しく愛してあげたいと思う。
思うけれど。
カカシの中で今まで強制的に眠らせていたものが、イルカを抱けると分かった途端、暴れ始めている。
カカシは今、それを理性で懸命に押さえつけながら、ベッドの上に横たえたイルカの身体から、浴衣をゆっくりとした動きで剥ごうとしている。
態度でも、身体でも、そして『声』でも。
恥ずかしいと全身で訴えてくるイルカが可愛い。
「そんなに恥ずかしがらないで。身体を見るのは初めてじゃないでしょ?」
浴衣の帯を解いて抜き取りながらそう言うと、背中を擦る帯の刺激にすら感じるようになっているイルカが身体を震わせ、ふ、と熱い息を吐きながらカカシを見上げてくる。
手の甲で既に荒くなってしまっている息を押さえ、潤んだ瞳でカカシに早くと訴えているイルカに、理性が崩壊しかける。
「お願いだから、そんなに煽らないで・・・。理性が持たない」
初めてなんだから、優しくしたいんです。
くっときつく眉を寄せそう言ったカカシに、イルカが荒い息の下で小さく笑みを浮かべた。
「カカシ、先生は・・・、いつだって、優しいです」

『俺の事、本当に大切にしてくれる。愛してくれてる・・・。怪我してた俺を、今日まで待ってくれてた』

イルカの震える手がそっと伸ばされ、見下ろすカカシの頬に添えられる。
「今まで待たせてたのは、俺のほうなのに・・・っ、それなのに、俺・・・っ」
きゅっと眉を寄せたイルカが、じわりとその瞳に涙を浮かべる。

『我慢出来なくて、カカシ先生に早く抱いて欲しくて・・・っ』

「帰ってきてからずっと、まだかなって思ってた・・・っ」
今まで我慢させてごめんなさい。こんなにもつらいなんて、思っていなかった。
こんなにつらい思いを今までずっとさせていて、ごめんなさい。
そんな『声』が聞こえてくる。

『もう我慢しないで・・・っ。酷くしてもいいから、早く・・・っ』

カカシを求めるイルカの二種類の声が、カカシを襲う。
視線でも『声』でも懸命に訴えてきているイルカに、胸に痛みを感じてしまうほどに、愛しいという感情が沸き起こる。
「イルカ先生・・・」
カカシがこんな能力を持っていると知っていて、それでもここまで愛してくれるのは、この世でただ一人。イルカだけだ。
カカシの側にいたらプライベートなんて一時もないのに。
それを分かっていて、それでもこんなにもカカシを求めてくれるイルカを。許される事なら一生愛していきたいと思う。
本当の意味で愛されるという喜びを教えてくれたイルカに、カカシもそれ以上の愛情を返していけたらと思う。
頬にあるイルカの手に、自らの手も添え擦り寄る。
ちゅっとその掌に口付けを落とすと、イルカがぎゅっと目を瞑り、ビクンと身体を震わせた。
いつもより数段、敏感になっているイルカを目の前にして、カカシの中の獣が暴れる。
(もう・・・)
解放、してもいいだろうか。
イルカがこれだけ求めてくれているのだ。
もう自分を無理に抑えなくてもいいだろうか。
「・・・怖くなったら言って。夢中になったら、心の『声』が聞こえなくなるから」
見上げてくるイルカの潤んだ瞳を見つめながらそう告げ、イルカが頷いたのを確認して。
カカシは自分の中で暴れる獣を解放した。


イルカが、ふーっと長く息を吐く。忙しなく何度も。
浴衣を脱がしているだけでも感じすぎてつらいらしく、そうやって熱い吐息を何度も吐いて、快感を逃そうとしている。
「凄い・・・。もうイっちゃったの?」
浴衣を剥いで下着をずらしてみると、既にイルカの猛りきった高ぶりに纏わりつくように、白濁の体液がたっぷりと付着していた。一緒に、イルカの熱に温められた空気も立ち上り、カカシに精の酸えた匂いと甘い香りを届ける。
いつイったのかと少し考えて、そういえばと思い出した。
先ほど、カカシがイルカに貪るようなキスをしていた時、イルカが戸惑うような『声』をあげた。
激しいキスについていけないのかと思っていたのだが、どうやらその時にイってしまったようだ。

『だって・・・っ』

きゅっと眉を寄せたイルカが、わずかに涙を流しながらカカシを見上げてくる。
心と身体がカカシを求めていて制御できない。
自分じゃどうしようもないと、イルカのつらそうな『声』が訴えてくる。

『だから、早く・・・っ』

「助け、て・・・」
イルカの掠れた小さな声が、カカシに助けを求める。
まるで媚薬でも飲んだかのようなイルカのその痴態に、カカシの熱もどんどん上がっていく。
見上げるイルカにちゅっとキスを落として、カカシはイルカの敏感に震える身体をうつ伏せにした。
優しくしたいのは本当なのに、こんなイルカの姿を見せられてカカシの理性が擦り切れかけている。
早くしないと、本当に酷くしてしまう。
(初めてでこれは、ちょっと可哀想だけど・・・)
ぐいとイルカの腰を引き上げる。
「や・・・っ」
「少しだけ我慢して」
恥ずかしい格好をさせられて、『恥ずかしい』『嫌だ』とカカシの手から逃れようとするイルカに短くそう言って。
カカシはイルカの、滑らかで引き締まった双丘を割り開いた。
目の前に、イルカの吐き出した精液を纏った蕾が現れる。
赤くひくつくソコに、ついに挿れる事が出来るのだと思うと、みっともなく喉が鳴る。
早く入りたいと、愚息が主張する。
でも、その前に。
震えるイルカの太腿を宥めるように擦り、カカシはそっと顔を寄せた。
「やぁ・・・ッ!」
カカシの伸ばした舌先が蕾に触れた途端、イルカが嫌がって暴れだす。
逃げようとする身体を許さず、しっかりと腰を掴んでたっぷりと唾液を纏わせた舌を中へと押し込める。

『それっ、嫌です・・・っ!』

『止めて』『舐めないで』と何度も『声』で訴えてくるイルカが可哀想だったが、こうしないと痛くしてしまうから。
「もう少しだけ我慢して。痛くしたくないんです」
カカシはそこから顔を上げずにくぐもった声でそう告げ、舌で蕾を舐めながら、とろりと液を零す前も一緒に扱き始めた。