重なる心と身体 4






高ぶりをきつく扱かれてイルカの抵抗が弱まったのをいい事に、襞を舐める舌と一緒に指も中へ潜り込ませる。
違和感は感じていても痛みは感じていないイルカにホッとしつつ、イルカの『声』に集中しながら、カカシは慎重に中を探っていった。
そうして。

『そこ・・・ッ!』

「あぁんッ!」
二つの声が、イルカのイイところを教えてくれる。
(ここか・・・)
見つけたそこをカカシは執拗に弄った。
イルカの身体が開くように。もっと快楽に溺れてしまうようにと。
強引だし、性急過ぎると自分でも分かっている。
本当は、もっとゆっくり、優しく抱いてあげたかった。
けれど。
淫らに乱れるイルカに煽られて、イルカの『声』が途切れ始めている。
行為に夢中になってしまったら、イルカの心を汲み取ることが出来なくなる。
怖がっているのに気づかず、痛みを感じているのにも気づかず、その身体を貪り、この可愛らしい蕾を何度も犯してしまう。
だから。
「やぅ・・・っ」
もう一本指を増やす。舌で潤いを足しつつ、指で開いていく。
イルカの身体がガクガクと震え、手が縋るようにシーツをきつく引き寄せる。

『やだ・・・どうにかなりそう・・・っ』

気持ちイイとイルカが訴える。
『もっと』と素直な『声』が訴えてくる。
慎ましやかに閉じていた蕾が花開いていく。

『も・・・、きて欲し・・・っ』

イルカが短く息を吐きながら、カカシを振り返り見つめてくる。
『欲しい』『繋がりたい』と訴えてくる。
「イルカ先生・・・」
イルカもだが、カカシも散々煽られて限界に近い。
(持たないだろうな・・・)
恐らくイルカの熱い内部に入ってしまえば、すぐにでもイってしまうだろう。
我慢し続けた身では耐えられそうに無い。
着ていた浴衣を脱ぎ捨て、イルカの背に覆い被さる。シーツを握り締めているイルカの手に、手を重ねてきつく握り込む。
「・・・息吐いて。挿れるよ・・・?」
耳元でそう囁きながら、カカシは自らの怒張に手を沿え、イルカの蕾に切っ先を当てた。ひとつ頷いて短く息を吐くイルカに合わせて、ゆっくりと猛りきった刀身を中へと押し込めていく。
「ああ・・・ッ!」
痛くはないのだろう。
背を逸らしてはいるが、イルカの声からも『声』からも、痛いという言葉は出てこない。代わりに。

『あぁ、やっと・・・!』

じわじわと押し込むカカシに、イルカの『声』が『嬉しい』と何度も伝えてくる。
カカシをやっとイルカのものに出来ると。
イルカのその『声』が泣きそうになるくらい嬉しい。
何とか暴発する事無く根元まで押し込むと、カカシはイルカの震えている背を包み込むように身体を添え、きつく抱きしめた。
真っ赤に染まっているうなじにそっと口付ける。
「・・・それはこっちの台詞です。イルカ先生をやっとオレのものに出来た・・・」
やっとイルカがカカシのものになってくれた。
正直言うと、今日この瞬間まで、イルカに去られても仕方ないとカカシは思っていた。
いつでもイルカの心の『声』を聞いているカカシに、嫌気が差してイルカの心が変わったとしても仕方ないと。
もしもの時は、イルカに愛された日々を思い出に生きていこうと思っていた。
それなのに。
イルカは嫌がるどころか、カカシの能力が大切だと言ってくれた。
内緒話でもするように、カカシに心の中で楽しそうに語りかけてくれる。
カカシの能力を嫌がる事も無く、自分の心を隠そうともせず。
(もう手放せない・・・)
もうカカシはイルカを手放せない。
カカシをこんなにも愛してくれるイルカが愛しい。
ゆっくりと引き抜き、再びゆっくりとイルカの中を擦り上げる。
イルカの蠢く内部が、カカシを誘うように絡みつきながら奥へ奥へと導いていく。
「あぁ・・・、凄いね・・・」
心から愛してくれている人との営みが、こんなにも喜びに満ちたものだとは知らなかった。
初めて得る快楽に、徐々にカカシの動きが激しくなる。
夢中になっていく。
途切れ途切れだった『声』が、ついに聞こえなくなったのにも気づかず。
「あ・・・っ!あッ!ああ・・・ッ!」
激しく突き上げ、イルカを翻弄していく。
「イルカ、先生・・・っ、イルカ・・・っ、イルカ・・・ッ」
きつく握ったイルカの手を決して離さず、イルカを愛す事にただ夢中になっているカカシの怒張を、イきそうになっているのか、イルカの内部がきつく絞り込む。
そこにきてようやく、イルカから『声』が聞こえて来ない事に気づいて。
「・・・っ、イ、きそ・・・っ?」
突き上げながら訊ねたカカシのその言葉に、イルカが激しく揺さぶられながらも振り返る。
今、心の『声』が聞こえてないから分からない。
そう告げようとしたカカシだったが、振り返ったイルカの快楽に堕ちた瞳を見て、汗の滴るその顔に僅かに苦笑を浮かべた。
(聞こえなくても分かるな・・・)
イルカは『声』だけでなく、その表情全てが素直だ。
『声』は聞こえていなくても、イルカの存在全てがカカシを求めてくれていると分かる。きっと、聞こえていない『声』も、カカシを求めてくれているのだろう。
イルカのカカシを見るその瞳に、愛しさとか欲情とか、いろんなものが浮かんでは消える。僅かに開いた唇が、カカシの名を形取る。
そんなイルカの艶やかな表情を見て、もうダメだと、カカシは思った。
もう持たないと。
きっと、心の中でもカカシの名を何度も呼んでくれているのだろう。
聞こえては来ないイルカのその『声』を想像して煽られたカカシが、絡みつくイルカの内部にいつまでも耐えられるはずもなく。
「・・・一回、イってもいい?」
イルカの身体をきつく抱き、一度イかせて欲しいと願ったカカシに、だが、イルカはふると首を振った。
「ま・・・っ、あっ、俺もっ、ぎゅってっ、したい、です・・・っ」
きゅっと握っていた手を握り返されて、カカシは苦笑してしまった。
やはり『声』が聞こえなくては、イルカの心の細やかな部分までは気づけないようだ。
(確かに大切だ・・・)
『声』が大切だと言ったイルカの言葉に、疎ましいとしか思わなかったカカシもようやく賛同する。
「ゴメンね、気づけなくて・・・。しばらく息吐いてて」
カカシに言われた通り、イルカがふぅーと長く息を吐くのを聞きながら、繋がったままイルカの太腿を掴み、ぐるりとその身体を回転させる。
「ぃあ・・・ッ!」
カカシの目の前に、泣いていたのか涙の跡をたくさん残すイルカの顔が現れる。
「・・・痛かった?」
イルカの瞳に新たな涙が浮かんだのを見たカカシが、涙の残る頬に張り付いた髪を掌で取り除いてやりながらそう訊ねると、イルカは荒い息を吐きながら微かに笑みを浮かべて、首を振ってくれた。
「だい・・・じょうぶ、です」
そう言って、カカシに嬉しそうに手を伸ばしてくる。抱きついてくる。
「・・・すごく、嬉し・・・っ」
イルカの涙交じりのその言葉に、イルカをきつく抱き締め返しながら、カカシはその顔に笑みを浮かべた。
僅かに目尻に涙が浮かんでしまったのは、イルカには内緒にしておこう。
「・・・オレも嬉しいよ、イルカ先生。・・・一緒にイこ?」
イルカの両足を抱え上げながら耳元でそう囁くと、カカシは動きを再開させた。
二人一緒に、絶頂へと上り詰めて行くために。
そうして。
その日、二人は本当の意味で愛し愛される存在となった。