静かな雨 5 汗が浮かぶ額や熱く感じる頬に数度口付けていると、イルカの瞳に光が戻った。 「・・・ッ!ぃやだ・・・ッ!」 その瞳が頬に口付けるカカシを捉えた途端、イルカは自らの欲に触れるその手が誰のものか理解したのだろう。驚きに目を見張った後、くしゃりと泣きそうな程に顔を歪め、身を捩った。 イルカの縛られた手首に縄が食い込み、新たな擦り傷が出来る。 それを見たカカシは慌てた。 「イルカ先生、暴れないで!大丈夫だから。ね?」 イルカへとそう言いながら、暴れようとするその身体をきつく抱き込む。 そうして、カカシはこっちに集中してとばかりに握り込んでいる欲を再度扱き始めた。 「やっ!やだ・・・ッ!」 強張らせた身体を小さく丸め、イルカがカカシの手を拒絶する。 まだ身体を見せた事のないカカシに触られるのは嫌なのかもしれない。その気持ちは痛いほどに良く分かる。カカシとて、こんな形でイルカに触れたくは無かった。 「イヤなのは分かります・・・っ。でも分かって・・・?これしか方法がないんです」 そう告げる声を出来るだけ優しく響かせる。拒絶しないで欲しい。急いで解毒しなければ、体内を巡る薬にいつまでも侵され続け、イルカの精神が持たないのだ。 イルカの苦しみを早く取り除いてやりたい。そう思うカカシの手が、嫌がるイルカに構わずその先端から苦しそうな涙を零す欲を扱き上げていく。 「やぁ・・・っ!おねが・・・っ、さわ・・・ないで・・・っ」 だが、イルカは掠れた弱々しい声で触るなと告げてきた。それでも手を止めないでいると、いやだと首を振りながら唇を血が滲む程に噛み始める。 「やめなさいッ!」 それを見たカカシは咄嗟に大声を上げていた。イルカの身体がビクリと大きく震える。 「我慢したりしたら、薬はいつまでも抜けませんよッ!?」 薬とカカシの手が与える情欲に耐えようとするイルカに、カカシは叱責の言葉を投げかけていた。 イルカの瞳にじわりと涙が浮かぶ。 それを見て、カカシはきつく眉根を寄せた。イルカの欲を扱く手が止まる。泣いているのか、カカシから顔を隠すようにして小さく震え始めたイルカの身体をそっと抱き締める。 そうして、カカシはイルカの頬に自らの頬を寄せた。優しく聞こえるようにと願いながら囁く。 「我慢しないで・・・?素直に感じていいんです。・・・それとも、オレに触られるのはそんなにイヤ・・・?」 カカシのその言葉にイルカが小さく首を振る。それにカカシはふと目元を緩めていた。 こんな状況ではあるが、カカシに触られるのは嫌ではないとイルカが思ってくれている。それがカカシには嬉しく、また、救われる思いだった。 「・・・きら・・・に・・・」 イルカが小さく呟く。 「ん・・・?」 「嫌いに・・・なら、な・・・?」 聞こえてきたイルカの子供のようなその声に、拒絶する理由はそれだったのかとカカシは小さく苦笑した。 薬に侵された淫らな姿を見せたりしたら、カカシに嫌われるのではと心配だったのだろう。カカシに嫌われたくないと、辛いだろうに我慢しようとしていたイルカが愛しい。 これから先、どんな事があろうともそれは無いとカカシは断言出来る。 ようやく見つけたイルカという陽だまりのように暖かい存在を、カカシが嫌いになるはずが無いのだ。 「嫌いになんてなりませんよ。・・・どんなイルカ先生も好きです」 愛しさを込めてそう告げると、イルカがそろそろと視線を向けてきた。 本当に?と問うその瞳を見つめ返して一つ頷き口付ける。そうしてカカシは、不安そうに震えるその唇の隙間から舌を滑り込ませた。 「ん・・・っ、んっ」 奥で隠れているイルカの舌を探し出し吸い上げる。その舌先が随分と甘く感じるのは、薬のせいだろう。 媚薬に侵されているイルカの体液を口にすれば、カカシまでも媚薬に侵される。 だが、暗部に所属していたカカシは、ある程度なら薬に対する耐性がある。何より、媚薬に侵され変化した自分の身体に不安を感じているらしいイルカを、これ以上不安にさせたくはなかった。 イルカにはこれまでたくさんのキスをしてきた。忙しい任務の合間に会うたび、好きだという言葉の代わりのようにその唇にそっと口付けてきた。 (好きだ・・・) このキスにもその想いの丈を込める。 くちゅりと僅かに音をさせて口付けをそっと解くと、イルカの瞳はとろんと蕩けていた。 桜色に染まる頬に口付ける。そして、首筋へも口付け、そこに舌を這わせる。 「あ・・・、だ、め・・・っ」 途端、イルカがその身体を敏感に震わせ、ぎゅっと瞳を閉じて身を捩る。 「大丈夫、大丈夫だから。素直に感じて・・・?」 まだ躊躇いがあるらしいイルカに囁くようにそう告げ、カカシは目の前にある耳朶を口に含んだ。 「ぁん・・・っ」 小さく震えるイルカが甘い吐息を零す。 耳元が弱いらしいイルカを愛しく思いながら、カカシはそこを重点的に愛撫し始めた。 「あっ、あぁ・・・っ、んぁっ」 そうしながらイルカの欲を扱く手をゆっくりと再開してみると、イルカが素直に甘い喘ぎ声を上げ始める。今度は嫌がらないイルカにホッとする。 「あ・・・ッ!そ、こ・・・っ」 蜜が止め処なく溢れ出す先端を、指先でぷつと柔らかく押し潰すように刺激すると、イルカが強請るような声を上げる。 「ココ?もっとして欲しいの・・・?」 そう小さな声で訊ねてみると、イルカがかぁと羞恥に顔を染めて見上げてくる。 「言って・・・?大丈夫だから。強請っていいんですよ」 カカシの促すその声にイルカは少し躊躇う様子を見せたが、しばらくして恐る恐るその唇を開いた。 「も、っと・・・」 小さく告げられたイルカのその言葉は、長い長い夜の始まりの合図だった。 一度強請る言葉を綴りそれが叶えられると、それが切っ掛けになったのだろう。イルカの口からは次から次へと、堰を切ったように強請る言葉が出てきた。 熱い。もっと触って。イかせて。 子供のようなたどたどしい声。見上げてくるイルカの瞳にはもう、普段の力強い光はどこにも無かった。 カカシの手を嫌がる事はなかったが、早く、もっとと強請るイルカが暴れてしまい、イルカの身体を拘束している縄は解けなかった。 イルカの手首の擦り傷に血が滲んでいる。それが痛々しく、カカシの眉根はずっと引き絞られたままだ。 時間は掛けられない。 急ぎたかったが、吐精も三度目になると、イルカは熱欲への刺激だけでは遂情しづらくなってきていた。 「・・・ほら、頑張って」 「ゃ・・・っ、イ、けな・・・っ」 敏感な首筋へと吸い付きながらそう囁いて、さらなる吐精を促すカカシの手をイルカが嫌がる。 薬はまだ抜け切っておらず、カカシが掌に握るイルカの熱欲はその勢いを失ってはいない。 熱欲へ与えられる刺激だけではもの足りなくなってきたのだろう。吐き出したいのに吐き出せないのだ。 「も・・・っと・・・っ。カカ・・・さ・・・っ、も、っと・・・!」 辛そうに喘ぎながら、イルカが涙の滲む瞳でさらなる刺激をカカシへと強請る。 それを見て、腰の奥がズンと重くなるのを感じたカカシは奥歯をきつく噛み締めた。沸き起こった劣情を懸命に押さえ込む。 (しっかりしろ・・・ッ!何を考えてる・・・ッ!) これは治療だというのに、イルカの痴態に欲情しようとする自分。心の中でそんな自分を罵倒する。 そうしながら、カカシはイルカの首筋から顔を起こし、その身体をうつ伏せにした。 前への刺激だけでは遂情しにくいのであれば、内からも刺激すればあるいは。 その時のカカシのその思考に、疚しい気持ちは少しも無かったと言えば嘘になる。 カカシの目の前に現れた、イルカの形良い引き締まった臀部。イルカが大量に吐き出した精で、そこはしとどに濡れていた。視線が逸らせなくなる。 柔らかな布団に頬を押し付けたイルカが早くと強請る。 「・・・少し我慢して」 イルカの精をたっぷりと纏ったその指を、ひっそりと閉じている蕾へと伸ばしながらそう告げるカカシのその声には、抑えきれない欲情の響きが僅かに混じり始めていた。 |
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