正しい犬のしつけ方 3






「駄目・・・です、って・・・っ」
「ダメじゃないでしょー?イイくせに」
濡れ始めた先端をくるくると指先で撫で回しながら、楽しそうに言うカカシのその言葉に、イルカは襲い来る快楽と屈辱から、くっと唇を噛んだ。
しっかりと抵抗しなければならないのに、気持ち良過ぎてきちんと抵抗できない。快楽に流される。
息を詰め、絶え間なく襲ってくる快楽の波に耐えているイルカの背後で、カカシがイルカを弄る手をそのままにごそごそと何かしていて。
(何を・・・)
そろそろと振り返ったイルカの視界に、少し俯いたカカシの、さらりとした銀髪が映った。
銀髪の合間から覗く、さっきも見た少し伏せられた深い蒼色の瞳。そして、初めて見る閉じた左目の上に縦に走る傷。
カカシの額当てが取り去られていた。それどころか、その口布さえも。
覆面をしていない素顔のカカシは、とてつもなくいい男だった。
(うわ、凄く綺麗な顔・・・)
こんなにもいい男を見た事のなかったイルカが、今の状況も忘れてついボケッと見つめていると、視線に気づいたカカシが少し汗の滲んだ顔を上げた。
パチッと目が合った途端、カカシが笑う。にっ、と物凄く卑猥な表情で。
「オレも、すっごくイイ」
カカシのその言葉とその表情に、カカシのイルカを弄っていない方の手が何をしているのか分かってしまったイルカはひっと息を呑んだ。
慌てて前を向くと、この状況を否定するようにギュッと目を閉じる。
(早く終われ、早く終われ、早く終われっ)
快楽の奴隷となり果て、抵抗なんて出来なくなっていたイルカが、ただただ、この訳の分からない状況が早く終わってくれるよう祈っていると、先走りで滑りの良くなったイルカのソレを、カカシが追い上げるように擦り上げてきた。
「あッ!・・・んっ、んッ!」
声を出さないよう忍服の袖口を慌てて噛んで、イってしまわないようその刺激に懸命に耐えていたのだが。
「んあ・・・ッ!」
感じやすい亀頭を中心に弄るカカシの手に耐えられず、あっさりとイってしまい、男の手でイかされたというあまりの屈辱にガクリと教卓に倒れこんだイルカの背後で、カカシが「う・・・ッ」と呻る声が聞こえた。
ほぼ同時に、びちゃびちゃっと生暖かいものがイルカの太腿の辺りに掛かる。
「ッ!」
とろりと太腿を伝うそれが何なのか、見なくても分かった。というか、見たくもない。
教卓の端をきつく握り締めて屈辱にぶるぶると震えているイルカの身体を、カカシが引き摺り下ろす。
そして、教卓に凭れさせるようにイルカを座らせると、カカシもその側に座り込み、イルカの腰を抱き寄せた。
「もう一回。ね?」
「なッ!」
カカシのその台詞に、イルカは再びくらりと意識を飛ばしかけた。
「ふざけ・・・んなッ!」
そう言って腕を突っ張り、近寄ってくるカカシの身体を押し戻そうとするのだが。
「だって、オレまだ満足してないもん」
遂情したばかりの身体は全く言う事を聞いてくれず、イルカはそんな事を言うカカシの腕の中にあっさりと捕らわれた。
「ダメ?」
「だ・・・っ」
駄目に決まってる!
カカシを睨みつけ、そう怒鳴ろうとしたイルカの視界に映る、カカシの端正な顔。その端正な顔が、それまでの卑猥な表情から一転して淋しそうな表情を浮かべた途端。
イルカは怒鳴る言葉を失った。
その顔が、雨の日にダンボールに入れられ捨てられてしまった仔犬の、くぅんと淋しそうに啼いている表情に似ていて。
「・・・どうしてもダメ?」
言葉を無くしたイルカに、カカシがさらに眉尻を下げ首を小さく傾げて訊ねてくる。
さっきまでの強引な行動とは打って変わった、イルカの意思を伺うその行動が。そして、イルカをじっと見つめてくる、その淋しそうな深い蒼の瞳が。
どうしてかイルカの目には、仔犬がうるうるとつぶらな瞳で懸命に訴えてきているようにしか見えなくて。
「あ・・・」
駄目という一言がどうしても言えず、困って俯いていると、カカシの手がイルカの突っ張っている腕をきゅっと掴んだ。
「・・・ね?お願い」
そう言って覗き込んでくるカカシのその表情は、イルカの庇護欲をこれでもかと刺激した。
カカシは上忍なのだから、一言命令すれば中忍であるイルカは逆らえないのに。
それなのに、命令じゃなく「お願い」と言ったカカシの、その懇願するような態度と、縋るように掴まれた手がイルカの胸を擽る。
(くそ・・・っ)
覗き込むカカシから視線を逸らすと、イルカは悔しさからくっと唇を噛んだ。
悔しい。
抵抗もろくに出来ずにイかされた事も悔しかったのに、その事に文句も言わないうちにもう一度だなんて。
だけど。
「・・・・・・あと一回だけですよ?」
たっぷりと10秒は間をあけて、真っ赤になりながらそう告げたイルカに、カカシがぱぁと嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ホント!?」
その顔はどこからどう見ても、飼い主に遊んで貰えると分かってブンブンと尻尾を振る大型犬のようで。
苦笑しながら、イルカはこくんと頷いた。
(子供たちが待ってるけど・・・)
こんな顔で懇願されたら断れない。あと一回だけ付き合えば、カカシも満足するだろう。
文句はその後たっぷりと言わせてもらう事にして。
それほど時間も掛からないだろうしと思ったイルカのこの時の考えは、とてつもなく甘かったという事を、イルカは数時間後に思い知る事となる。