正しい犬のしつけ方 13 カカシの手に吐き出したイルカの精が、尻の合間にベッタリと塗り込めらる。 それを感じたイルカは、目の前の扉に額を付け、嫌だと首を振った。 (怖い・・・っ) 怒った様子のカカシが怖かった。 このまま最後までされてしまうのだろうかと考えたら、涙がさらに溢れた。 カカシはどれほどイルカの身体を弄っても、最後まではしようとしなかったのに。 それだけが、二人が身体だけの関係では無いという証だと思っていたのに。 最後まで関係してしまったら、今までの二人の穏やかな関係すら壊れてしまいそうで恐怖が増した。 カカシとの、あの穏やかな時間を壊したくなかった。 遂情からではない震えに身体を震わせているイルカを、カカシが後ろから抱き締めてくる。 ツンと尻の合間に当てられたカカシの、剥き出しになった熱い欲望。 それを感じたイルカは、やはり突き入れられるのだと青褪めた。 「ぃやだ・・・ッ!や・・・っ」 口に入れられていた指を振り切り、そう叫びながら懸命に暴れるイルカの身体を、カカシの腕が軽々と拘束する。 「・・・暴れないで」 その低い声があまりにも恐ろしく聞こえて、イルカはビクリと身体を震わせて暴れるのを止めた。 だが。 「・・・ぃや・・・です・・・。やめ・・・」 どれほど怖くとも、口からは嫌だという言葉が零れた。 どうしても嫌だった。 カカシにこのまま抱かれたくなかった。 震えながら、嫌だ、止めて下さいと繰り返すイルカに、背後のカカシがはぁと溜息を吐く。 恐怖に覆われていたイルカは、その溜息にすらビクリと身体を震わせてしまった。 そんなイルカの口元に再度カカシの手が伸びてきて、今度はそこをすっぽりと覆われる。 「・・・ちょっと黙ってて」 カカシの怒りを抑えているようなその声を聞いたイルカは、胸を襲う悲しみに、溢れる涙を止めることが出来なかった。 突き入れられるのだろうというイルカの予想に反して、カカシはそうはしなかった。 「んん・・・っ!んッ!」 カカシの手によって塗りつけられた、精で滑るイルカの尻の間で、カカシの怒張が前後している。 まるで性交しているかのような動きではあるが、カカシのソレはイルカの中に入って来ようとはしなかった。 ただ、閉じたイルカの足の間に擦り付けているだけ。 カカシが動くたびに敏感な内腿や袋の裏側を擦られ、イルカはカカシの手に覆われたままの口の中で、くぐもった喘ぎを漏らしていた。 手荒な事をされるかとも思ったが、カカシの行動は、イルカの口を覆っている以外はどこまでも優しくて。 「・・・っ、イルカせんせ・・・っ」 それに、カカシがイルカの耳元で何度も何度も、縋るようにイルカの名を呼ぶものだから、それを聞かされたイルカは、カカシの手が優しく愛撫するたびに涙を零した。 (勘違いしそうだ・・・) 勘違いしてしまいそうだった。 カカシが優しすぎて。 カカシはイルカに怒っていた。 それはそうだろう。 イルカの身体は、こんなにもカカシの手に従順に開いているのに、イルカは頑なにそれを認めなかったのだ。 イルカの身体は快楽を求めていて、イルカの匂いに発情するカカシとイルカの利害は一致していたのだから、カカシはきっと、素直じゃないイルカに怒っていたのだろう。 黙れと言ってイルカの口を塞いだ掌はそのままだから、まだ怒っているのだろうに、口を塞いでいる手以外がとてつもなく優しくて、イルカは混乱した。 怒っているのなら、優しくなんてしないで欲しかった。 酷くされるのなら、嫌だと何度も言ったのに約束を破ってこんな事をするカカシを蔑み、恨めたのに。 イルカの身体をカカシの手が優しく這い回るたび、イルカの胸は切なく締め付けられた。 まるで恋人にするような愛撫だと思った。 そんな事、あり得ないのに。 (だってそうだろう・・・?) うなじの辺りで、すん、という音が聞こえる。 それまで、カカシの優しい手にうっとりと酔っていたイルカは、聞こえてきたその音にハッとした。 勘違いするなと言われた気がした。 カカシが匂いを嗅ぐたび、カカシはイルカの匂いに発情しているだけなのだという事を思い知らされた。 嗅がれるのが嫌で、嗅がないで欲しいと首を振ると、背後で荒い息を吐いているカカシがふっと笑った。 「・・・オレに嗅がれるのがそんなにイヤ?・・・でもね」 優しい声が一転して刺々しくなったと思ったら、イルカのうなじの辺りで、すん、という音がした。 「んぅ・・・っ」 その音を聞いた途端、まるで条件反射のようにイルカの身体の熱がさらに上がる。 「・・・ほら。オレに嗅がれると、イルカ先生、こんなに感じるじゃない」 蔑むようにそう言われて、イルカの瞳から新たな涙が零れた。 「・・・認めれば楽になれるのに。お互い、身体がこんなに気持ち良くなってるんだから、素直になって楽しめばいいでしょ?」 続いて聞こえてきたカカシのその言葉に、イルカは目を見開いた。 心を抉られたかと思った。 カカシが求めているのは、身体だけなのだと最後通牒を突き付けられて、イルカが思っていた以上にイルカの心は悲鳴を上げた。 (なんで・・・っ) 分かっていたはずなのに。 カカシはイルカの匂いに発情しているだけだと分かっていたはずなのに。 そこに何の感情もありはしないと分かっていても、カカシの口からそう聞かされると、まるで裏切られたような気持ちになった。 見開いたままの瞳からボロボロと涙が零れ、嗚咽を堪えるイルカの身体を、カカシの手が再度這い回る。 「んんッ!」 ツンと尖った乳首の先端を潰すように捏ねられて、イルカの身体は、その心に痛みを抱えていても正直にカカシの手に応えた。 絶頂が近いのか、徐々にカカシの動きが激しくなる。 「んんっ、んん・・・ッ!」 イルカの熱棒にカカシの手が添えられ、そのままきつく扱かれて、イルカは仰け反った。 心では嫌だと思っていても、その身体はカカシの手に嬉々として堕ちている。 そんな自分もカカシと同じく、気持ちよくなれればそれでいいのかと思うと、イルカは自分のあまりの淫らさに目の前が暗くなりそうだった。 カカシの手に滑る先端を指で押し潰すように刺激され、鈴口に爪を立てられる。 その瞬間。 「んぅッ!」 「・・・ッ!」 イルカは再度カカシの手の中で果て、それに少し遅れて、カカシもイルカの尻の合間で精を弾けさせた。 荒い息を吐きながらずるずると座り込むイルカの口からカカシの手がようやく離れ、解放されたイルカの口から小さい呟きが漏れる。 「・・・こん、な・・・」 身体に纏わりつく精の濡れた感触が嫌だった。 小さく身体を丸め、蹲るイルカの閉じた瞳からボロボロと涙が零れる。 もうしないと約束したのに、再度触られた。 嫌だとあんなに言ったのに、聞いてもらえなかった。 「・・・こんなの・・・っ、好きでもない人とする事じゃ、ない・・・っ」 「・・・ッ!」 小さな声でそう言ったイルカの声に、背後に立つカカシが息を呑んだ気がした。 声を押し殺して泣くイルカの耳に、しばらくしてカカシの静かな声が聞こえてくる。 「・・・分かった・・・」 上から響くその声が、悲しそうだと思ったのはイルカの気のせいだっただろうか。 「もう絶対にしない。・・・イルカ先生にも、もう近寄らないから・・・」 小さく掠れた声でそう告げ、痛々しいその声にイルカが振り返るよりも前に。 カカシはイルカをそこに置いて、煙だけ残してイルカの前から姿を消した。 |
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